日本の選挙結果は、ウラン市場へのちょっと早いクリスマスプレゼント

当会は、昨年12月18日付のトピックスにおいて、16日行われた日本の衆議院選挙の自民党の大勝という結果を受けて、ニューヨーク株式市場(NYSE)にて、世界のウラン(鉱山)会社の代表的ウラン(鉱山)指標株価であるカナダのカメコ社の株価が、市場平均を超える上昇をなした旨をお伝えさせていただきました。

 

これに対して、ある閲覧者の方から、今回の自民党の大勝に関して、世界のウラン(鉱山)市場がどのような評価と反応を示しているのか具体的に言及された記事や情報があれば、是非紹介して欲しいとの要望がございましたので、当会としては米国の著名な無料ウラン投資情報記事サイトである「U3O8 Uranium Investing News」 の12月20日の記事を以下、大意を和訳し、掲載させていただきたいと思います。

 

なお、当該原文記事は以下のとおりのものであります。http://uraniuminvestingnews.com/13347/japan-election-uranium-market-investing-demand-supply-nuclear-power-reactors.html

 

 


(大意)

 

「日本の選挙結果は、ウラン市場へのちょっと早いクリスマスプレゼント」 多くのアナリストが予想したとおり、12月16日の日本の衆議院選挙における自民党の地滑り的勝利を受け、ウラン(鉱山)関係の株式が上昇した。

 

福島第1原発の事故以来、日本の動向は、このセクターの値動きの先導役であった。自民党は、積極的な経済政策を取ることを計画し、原子力発電に対しても肯定的であったわけであるが、日本においては段階的に原子力発電所を廃止し、2040年までに全廃することを約束していた民主党に対して勝利したことは、ウラン市場の今後に対して、再度肯定的な見込みをもたらすことになるだろう。

 

「モーニング・ノート」の最新の社説で、ディスカバリー・インベスティング・アンド・ ハウス・マウンテン・パートナーズのクリス・ベリー氏は、「この自民党の勝利は、多くのウラン市場関係者が待ち望んでいたこのセクターにおける転換点になる可能性があり、2013年においては、ウラン(鉱山)関係の会社に対する投資に対する躊躇をなくし、かつてのようにウラン(鉱山)株式は、投資家にとって親近感を持った投資対象になる可能性が出て来た。」と言う。

 

自民党は、火力発電用の石炭や天然ガスの輸入コストを削減するため、日本の原子力発電所を再稼働させる必要があるという主張ののち、衆議院の3分の2の議席を獲得した。ブルームバーグ社のクリストファー・ドンビル氏によれば、この選挙の結果は、いくつかのウラン(鉱山)関係の会社すなわち、ウラニウム・ワン社、エナジー・リソース オブ オーストラリア社、バナーマン・リソース社、パラディン・エナジー社、そしてカメコ社を含む会社の株式を急騰させたと言う。

 

福島第1原発の事故の前は、原子力発電は、日本の約3割の発電量を賄っていた。しかしながら現在は、50ある原子炉のうち2機が稼働しているに過ぎない。島国である日本においては、代替資源である天然ガスや石油や石炭のようなものは、ほとんど産出しない。

 

輸入エネルギーの高いコストは、日本における絶望的な経済を再建するのに重大な重荷となっている。その問題を軽減するために、自民党は、早期に停止している原子炉を再稼働させなければならないとし、3年以内に十分な安全性を確認して、再稼働させることを提言していた。

 

エネルギーの輸入に係るコストの増大は、生活コストの増大を招き、日本の国富を弱小化させている。そして、政府による景気刺激策の効果を台無しにしている。代替エネルギーや石油、液化天然ガスの輸入は、経済を維持するには高くつき過ぎるのである。モリソン・ウイリアム・インベスト・マネージメントのポートフォーリオマネジャーであるロバート・グリル氏は、「グローブ・アンド・メール誌」にそのように書いている。

 

しかしながら、投資家は注意すべきであるとアドバイスするのは、先の「モーニング・ノート」のベリー氏である。「明確なことは、日本における原子炉が再稼働するのはいつなのか、また再稼働するかどうかであるが、それぞれの原子炉に対しては、安全性の調査が行われなければならず、その結果再稼働することになるのであるから、多くの人たちが予測するより、長い時間がかかる可能性がある。」と言うのである。

 

伝えられるところによると日本の原子力規制庁は、日本国内の6つ原子力発電所が、活断層の上に建てられているかどうかを調査・検討中であるという。日本の原子力産業関係の内部の者に言わせれば、再稼働のためのプロセスを容易にするには、自民党が民主党が作った再稼働のための総理大臣、経済産業大臣、他の2か所の関係閣僚及び原子力規制庁のすべての承認が要るという現在のルールを変更することであり、これを押し進める必要性にあると言う。

 

アナリストたちは、日本における原子力発電所の再稼働は2013年から2015年に集中化するだろうと予測する。その再稼働は、ウラン燃料の需要を増大させるだろうが、同じ時期に、供給が大きく減少するだろうとマーケットは見ているのである。2013年の終りには、米国とロシア間の解体核に関する協定、公式には「メガトンからメガワットへプログラム」と呼ばれているプログラムが終了するだろう。このプログラムは、世界の約15%のウラン燃料の需要を賄ってきていた。

 

2013年におけるその終了は、マーケット関係者が見るように供給の後退という形にもしなるのならば、ウラン(鉱山)関係の株式にとって昔日の株価の輝きを取り戻せる契機になると思われる。直近のウラン燃料の供給減のニュースは、オーストラリアからもたらされているものである。

 

すなわち、オーストラリア環境省が、西オーストラリア州における初めてのウラン鉱山になる予定であったトーロ・エナジー社が開発するウィルナ・ウラニウム・プロジェクトの承認認可を遅らせているのである。「メガトンからメガワットへプログラム」の終了、日本の原子力発電所の新たな局面の出現、今後10年間において、全土で60の新しい原子炉を建設すると言う中国の雪崩のような需要増を伴う計画、オリンピック・ダム、ランガー・ヘィンリッチ、シガー・レイクを含む大規模ウラニウム鉱山の開発の延期、こういった事象の存在は、現在がウラン(鉱山)市場の将来的上昇の出発点であることを示唆しているのかもしれない。

 

「U3O8 Uranium Investing News」 December 20,2012

 

 

<当会からのコメント>

 

(U3O8とは)

 

今回の掲載記事は、米国の「U3O8 Uranium Investing News」からのものですが、この「U3O8」とは聞き慣れない用語かもしれませんが、八酸化三ウランの化学式のことです。ウラン鉱石は精錬されると、この八酸化三ウラン(U3O8)の形で取引されます。

 

これがいわゆる映画の題名にもなった「イエローケーキ」と呼ばれるものなのですが、欧米ではこの「イエローケーキ」をU3O8と化学式で呼ぶことが多くあり、U3O8と言えば、ウランの別名ともなっているポピュラーな用語です。

 

 

(この投資情報の見方)

 

さて、福島第1原発の事故前は、日本の原子力発電所におけるウラン燃料の消費量は、世界のウラン市場の約10%を占めていました。

 

しかしながら、事故後は、この需要が一気に消滅してしまったに等しいわけですから、この投資情報に記載されるとおり、「福島第1原発の事故以来、日本の動向は、このセクターの値動きの先導役であった。」という記載となるわけであり、特にその全面的再稼働の是非は、ウラン(鉱山)市場にとって、極めて重大な関心事ということになっていたわけです。

 

今回の自民党の大勝を受けて、この投資情報が、米国の投資家諸氏に対して提供した情報内容ですが、その言わんとする趣旨を要約させてもらうならば、日本のエネルギー政策について、原子力発電所を段階的に全廃するといっても、「島国である日本においては、代替資源である天然ガスや石油や石炭のようなものは、ほとんど産出しない。輸入エネルギーの高いコストは、日本における絶望的な経済を再建するのに重大な重荷となっている。」という事情が日本には、ベースとしてあるものであり、積極的経済運営を志向する自民党は、公約としても「早期に停止している原子炉を再稼働させなければならないとし、3年以内に十分な安全性を確認して、再稼働させる」ことを掲げており、その自民党が衆議院選挙に勝利した以上、日本の原子力発電所の全面的再稼働は間近いというスタンスをまずは提起しているといえましょう。

 

もっとも、この立場に対しては、後半部分で、クリス・ベリー氏の言葉を引用し、日本の原子力発電所の安全確認が長引く可能性があることをも示唆し、提供情報としてのバランスを取っているといえるわけでありますが、そうだとすると投資家としては、今すぐウラン(鉱山)関係の商品に対して、投資をして良いものなのか、悪いものなのか、さっぱりわからないことになります。

 

結局この投資情報は、前半部分に積極的投資の肯定論を持ってきていながら、全体の結論としては、そうはなっていないわけであり、ここから読み取れることを冷静に分析するならば、もっとも日本の原子力発電所の全面的再稼働を待ち望んでいるはずのウラン(鉱山)関係者への情報ですら、早期全面的再稼働というものに対しては、むずかしさを否定し難いものがあることを提示しなければいけないものとなっている事実だと思います。

 

では、そのむずかしさや事実とは何なのでしょうか?以下当会の見解を述べてみたいと思います。

 

(活動期に入った日本列島)

 

まず全面的再稼働に関し、乗り越えなくてはならない課題は、今や日本列島自体が高い確率で、地震の活動期に入ってしまったと見られる事実があることに対し、原子力発電所がどう対処出来るのかという問題です。

 

前記の事実は、東大地震研究所等の予測にも現れているところですが、複雑な配管が張り巡らされた原子力発電所において、震度6近くの地震に襲われた場合、当該原子力発電所が無傷で済むということはまず考えられず、最悪の場合は、原子炉が今回の福島第1原発同様のメルトダウンに至ることが当然に予測されます。

 

当会の関係者も、政府筋の学者の方から情報を得る機会がありますが、その情報によれば、個人的私見との断りはあるものの、単に東日本だけではなく、日本列島全体にわたり近年中に大規模地震が発生する確率は、高いとの意見をもらっています。

 

今や地震国日本おいては、原子力発電所を稼働させることは、メルトダウンが起こることを前提に安全対策を立てねばならないものなのであって、これをないがしろにすることは、福島第1原発で3基もの原子炉がメルトダウンしているという事実がある以上、いかに自民党といえども社会常識的には、無理といえましょう。

 

(求められる安全対策の要諦)

 

では、その安全対策はどうなるのか?マスコミでは、ストレステストやその他いろいろな内容が喧伝されていますが、こういった専門的内容に惑わされる必要は全く無く、要諦は、ただ1点だけであり、当会が従前より主張しているとおり、(平成24年5月23日付当会トピックス等参照)欧州の原子力発電所が、10年以上前には装備済みであったシビアアクシデント用のフィルター(このフィルターの装備により、炉心溶融(メルトダウン)しても、放出する放射性物質を0.1%以下にすることができるものであり、福島第1原発においても、この事故フィルターさえ装備されていれば、事故により東日本に拡がった深刻な放射性物質による汚染は防げていたわけです。)を各原子炉が備えたうえで全面的な再稼働を行うかどうかということです。

 

この要望は、当会のような市民団体だけではなく、すでに当時の民主党の原発事故収束対策PTにおいても、政府に対する要望として、提案がなされています。しかしながら、政府は、これを無視して、大飯原発の再稼働に入ったわけでした。

 

もっとも、昨年の大飯原発の再稼働後、新たに再稼働した原子力発電所は、未だありません。これは市民の反対運動の成果ともいえますが、何よりも大きな理由の一つは、日本列島が活動期に入ったといえる中において、シビアアクシデント用のフィルターを装備せずに原子炉を稼働させ、再度のメルトダウンが起きた場合の責任論への恐怖(もちろん法的責任論を含みます)が為政者にとっては何よりも大きかったものと当会としては思料しています。

 

事実、民主党政権では、原子力発電所の稼働に対する責任を政府が負うことを回避する方向性にあったといえるものでしたが、これに対して、先日のインタビューでは、自民党新政権の茂木経済産業大臣は、原子力発電所の再稼働は政府の責任で行うということを明言しました。

 

このような発言が出た以上、再稼働を行う場合には、国として各原子炉にシビアアクシデント用のフィルターの装備は、法的責任として必須となりましょう。

 

その高額さ等ゆえに、各電力会社が二の足を踏んできたシビアアクシデント用のフィルターの装備を自民党政権が各原子炉に対して成し遂げ得るのか?もっとも仮に、これを行わないで、再度のシビアアクシデントに及んだ場合、これによって生じた人的被害については、もはや未必の故意といえ、単に担当大臣だけではなく、これにかかわった役人個々人の刑事責任自体も顕在化することになるといえましょう。

 

(どう国民を欺くか)

 

我々は、こういった事情をきちんと認識しておく必要が、今何よりもあるといえましょう。このような事情の下、今後考えられ得ることは、原子力発電所の安全施策において、マスコミを含め、専門用語を羅列し、実質は何もなされていないにも係らず、何かがなされたような形を偽装し、原子力発電所を全面的に再稼働させようとする動きが,為政者には出てくる蓋然性があるということです。

 

この点に対抗するために、我々がなさなければならないことは、シンプルに物事を考え、そして説明させることであり(このことは他の一般の国民に対して、全面的再稼働の是非を理解してもらうためにも有益といえます)、自民党政権に対して要求することは、「再稼働をさせるのであれば、10年前の欧州並みの安全基準であるメルトダウン時にも、放出する放射性物質を0.1%以下にすることができるシビアアクシデント用のフィルターの完備は、最低限でもなされたのか否か?」この1点のみを追及していくことを中心に据えるべきと思われます。

 

(本掲載記事からの重要な情報)

 

ちなみに、今回の掲載記事には、重要な原子力ムラ(Nuclear Establishment)からの本音が記載されています。すなわち「再稼働のためのプロセスを容易にするには、自民党が民主党が作った再稼働のための総理大臣、経済産業大臣、他の2か所の関係閣僚及び原子力規制庁のすべての承認が要るという現在のルールを変更することであり、これを押し進める必要性にあると言う。」という情報です。これは前述したとおり、仮に自民党政権がシビアアクシデント用のフィルターの整備すら行わずに全面的再稼働に及んだならば、事後の責任はすべてその手続に係った大臣・官僚が連帯して、しかも個人としても負う蓋然性を有することになるものといえるわけです。

 

よって、それに係る者が多ければ多いほど、自民党政権といえども、責任回避の立場から承認を下すことを渋る者が多く出ることは、当然なのであり、考えてみるとこの民主党の作成したシステムは、日本の原子力発電所の全面的再稼働を判断するためには、日本における大臣制度、官僚制度をうまく利用した極めて慎重な判断がなされる機能をビルト・インした制度といえましょう。

 

その点で、この掲載記事にもあるとおり、原子力ムラ(Nuclear Establishment)が今後総力を挙げて、その変更を自民党に求めてくることは想像に難くなく、この手続制度を守るように監視することもまた、我々にとっては、極めて重要なことといえましょう。

 

(その他の掲載記事の内容について)

 

ところで、掲載記事中にある「メガトンからメガワットへプログラム」については、当トピックス欄平成24年8月17日付及び9月17日付にて詳しく説明を行っておりますので、その内容をご参照ください。また西オーストラリア州のウランの採鉱問題については、当トピックス平成24年9月17日付の内容をご参照ください。

 

さらに、オリンピック・ダム(鉱山)に関しては、同様に平成24年9月17日付を、シガー・レイク(鉱山)に関しては平成24年8月17日付のそれぞれのトピックス記事をご参照いただければ詳しい内容がおわかりになると思います。

 

なお、ランガー・ヘィンリッチ(鉱山)は、西アフリカ、ナミビアのウラン鉱山であり、オーストラリアのパラディン・エナジー社が経営する大規模鉱山ですが、市況等の影響により、開発の遅れが生じています。

 

(平成25年1月3日事務局記)