<米国投資情報から見るウラン(鉱山)業界  その2>

当会は、8月17日に、「米国投資情報から見るウラン(鉱山)業界」というトピックスを掲載し、米国の8月1日付無料投資情報記事「Seeking Alpha α」をベースにウラン(鉱山)業界に対するコメントを掲載させていただきました。 

 

これにつき、新たに8月14日付で、「Seeking Alpha α」のウラン(鉱山)業界に対する、無料投資情報記事が、追加配信されました。以下のものです。

 

http://seekingalpha.com/article/805071-waiting-for-catalysts-what-s-ahead-for-nuclear-energy-and-uranium-stocks?source=yahoo

 

当該内容は、前記8月1日付の無料投資情報記事をさらに補完するものであり、あらためて世界の原子力産業全体の特殊事情の把握にも役立つ情報が、ふんだんに盛り込まれておりますので、まずは当該記事の大意を以下に掲載させていただくとともに、当該大意内容から読み取れる、ウラン(鉱山)業界と原子力産業に関する、日本ではまず報道されることのない、留意点や事実等を本トピックスでは解説し、当会からのコメントを述べていきたいと思います。

 


(大意)

<好機を待ちながら:原子力産業とウラン鉱山株の将来には何がある?>
 物事は、常に見えていることばかりではない。市場の変動幅は、投資家心理によるものばかりではない。昨今のメディアによる日本の原子力発電所の再稼働への期待や中国への期待は、原子力関係の金融商品に関して、バラ色の未来を約束したものではない。

 

 メディアが注意を払うように原子力関係の問題は、原子力関係の株式の株価に及んでいる。原子力発電所の建設の遅れ、世界的に弱含みの原子力への需要、昨今の原子力産業の利益的な苦境、世界的な株価の変動とともに、原子力関係の金融商品に関しては、投資家が抱く先行きの不透明感がある。

 

 過去数か月間、世界的市場において、原子力関係の株価は弱含みであった。過去3か月間において、「グローバルⅩウラニウム」という「ETF」は、10%値下がりした。そして「原子力エネルギー」という「ETF」は、直近4%の値下がりをしている。もっとも両方のETFとも年間の最安値からは上昇している。同時期にS&P500は、年間の高値より若干上昇している。我々としては、原子力関係株式については、引き続き警戒するように伝えざるを得ない。投資家は株価の安さにのみ惹かれて、投資をなしてはならない。

 

 この場合、株価が低いということは高いリスクを持っているということであり、原子力産業には、短期的見方としても、問題性があり、重大なリスク要因に直面している。私たちの見解では、高くないバリエーションは、十分な投資には見合わないものである。

 

 ビジネスのファンダメンタルが変化することすなわち、産業の成長性への期待もまた、投資の決定には必要なものである。ファンダメンタルの改良なしで、バリュエーションの下降が続く状況は、重大な問題といえる。

 

以下いくつかの理由をあげてみよう。

 

・期待される中国での原子力発電所の建設の回復には、まだ時間がかかろう。

 2012年5月31日、中国国務院は、原則的な原子力安全政策を認可した。この認可のすぐ後に、国家発展改革委員会の副議長である張国宝氏は、中国がすでに事前承認した4か所の原子力発電所の建設が再開されることを示唆した。しかしながら、最大のポイントの一つである長期的な原子力発電所の建設目標、よりワイドな新しいプロジェクトの立案は未だ図られていない。新規プロジェクトの認可の更なる遅れは、投資家の投資意欲を削ぐことになろう。 

 

・日本での原子力発電所の再稼働は、一層時間がかかるかもしれない。

 従来予想されたものより、日本での原子力発電所の再稼働には、一層時間がかかるかもしれない。2011年9月、世界原子力協会は、2012年の終わりまでに、日本の原子力発電所の約半分が再稼働すると予測している。現在、日本では、たった2基の原子炉が、再稼働しているにすぎず、これは日本の原子力発電所のウラン消費量の4%分にしか過ぎない。

 

現在のものは、世界原子力協会の予想レベルに比較し、はるかに低い稼働率であるし、先行きも不透明である。再稼働の遅れを憂慮するマーケットの反応を過少評価すべきでない。日本の原子力発電所の再稼働の遅れによって、毎月福島第1原発の事故前と比較し、世界の原子力発電所によるウラン消費が1%減少し、年間を通すと、11%超の減少をもたらすことになる。

 

・ウランの価額の下落は、ウラン鉱山セクターの弱含みを継続させるだろう。

 ウラン市場の近時の供給過剰を受けて、世界原子力協会の予想によれば、2011年の世界のウラン需要は、約9%ダウンするが、我々の予想では供給量は、漸増するであろう。このダイナミックな変化は、2012年も続くであろう。ウランに対する需要は、まだ福島第1原発事故前まで回復していない。

 

 しかしながら、直近の生産品や再生ウランの供給は、同じペースではない。ここ数週間、カザトムプロム社カメコ社、ウラニウムワン社、パラデン社という世界の大手のウラン生産者において、2012年の生産量は、変化なしか、増加するとされる発表があった。米国のエネルギー省の発表によれば、同時期の2012年から2013年の間ウランの在庫品の処分は、増加するだろうという。

 

 BHPビリトン社オリンピックダム鉱山カメコ社キンタイル鉱山の開発の遅れは、長期的に見ればウラン市場の供給不足を意味することになろう。短期的に見れば、このことは投機的要素だ。

 

 実際ユーエックスコンサルティング社では、短期的なスポット需要の価額を上昇させるには、価額に対するインセンティブが 働かなくてはならないとする。

 

・2012年の弱含みの収益予想

投資家、アナリスト、ウラン鉱山会社は、今年度の期待はずれの収益予想の増加と2013年の不透明性により、2012年の収益は、従来より、弱含みと考えている。

 

 現在の環境下では、この予想は健全なものといえよう。原子力セクターの密接した経済環境との関係においては、従前の不合理な高期待をもたせることは、市場に大きな変動を引き起こすことになろう。

 

 もっとも、原子力の世界への投資は、暗く憂鬱なものとはばかりとはいえない。長期的に見れば、原子力産業は、確実に伸びるものだし、新興諸国においては、原子力の増進が顕著であろう。加えて楽観的になれる少数ながら、以下のような事象が、存在する。

 

・遅かれ早かれ、中国は、原子力発電の増強プログラムを再開するだろう。

 中国の原子力発電の増強プログラムへの復帰は、投資家の反応を劇的に変化させるだろう。

しかしながら投資家は、中国政府が動き出し、効果が出るまでには、本年末近くまで待つ必要がある可能性があるであろう。

 

・本年10月には、中国核工業集団公司が中国の株式市場上、最大の270億ドルの資金調達を伴うIPO(株式公開)を行う。

  このIPO(株式公開)は、原子力産業にスポットライトを浴びせることになり、投資家の関心を原子力セクターに呼び戻すことになろう。

 

・第3四半期、第4四半期の終了近くになるとウランの購入が活況を帯びてくる。 

これは、ウラン価額を刺激し、ウラン鉱山株のパフォーマンス向上に貢献するといえる。

 

・「メガトンからメガワットへプロジェクト」の2013年を期限とする終了は、ウラン市場において強気になれる要素である。

 これは、ウラン市場から供給が年間約240万ポンド消えるということを意味する。この見方は部分的には正しい。解体核の代替は、カザフスタン、カナダ、その他の諸国から、もたらされることとなろう。そして、もっとも大きな材料は、ウラン産業では各国政府のウラン在庫の少なさから、そこからの供給が、「メガトンからメガワットへプロジェクト」終了後も小さなものとなるから、強気材料になれるということである。

 

 以上のような要素は、現状の弱含みのセクターに新たな息吹をもたらそう。しかしながら原子力産業セクターにおいて、短期的要素は、長期的要素のファンダメンタルに陰りをもたらしている。投資家は、このセクターには、警戒すべきだし、原子力産業の現在の情勢を変える可能性のある前記諸条件による変化を見逃さないようにすべきであろう。

 

<当会からのコメント>


 前記「大意」の中には、ウラン(鉱山)業界と原子力産業をより知るには、必要不可欠とも言える重要な単語やフレーズが散在しています。本トピックスでは、まずは、これらの単語やフレーズ(下線を引いている単語やフレーズ)につき、裏の事情を含め、解説を行っていきたく思います。

 

<グローバルⅩウラニウム><ETF><原子力エネルギー>

 まず、ETFとは、「Exchange-traded Fund」の略称であり、上場投信の意味ですが、当該投資信託自体が証券市場で金融商品として、売買の対象になるものを指します。この投資信託は、一般的には、特定の株価指数等の指標に対して、価額の連動を目指すものとして組成されます。「グローバルⅩウラニウム」も、「原子力エネルギー」も、ウラン(鉱山)業界のある指数に対して、価額が連動するように組成された投資信託であり、売買のためにニューヨーク証券取引所(NYSE)にそれぞれ上場されているものです。ウラン(鉱山)業界の指数の上下変動に合わせて、価額が決まってくるものとなりますので、その価額自体が、ウラン(鉱山)業界の盛衰を表すものとなります。

 

<世界原子力協会>

 「世界原子力協会」は、1975年に英国のロンドンに設立された団体ですが、設立当初は、ウラン生産者の団体として、「ウラン協会」という名称で設立されました 現在は原子力発電及び核燃料サイクル全般に対する非政府団体として、「世界原子力協会」に名称変更しています。日本からは、「東京電力」「関西電力」「日本原子力開発機構」が正会員として加盟しています。ちなみに、「世界原子力協会」は、2026年には、世界の年間ウラン消費量は、130,000tuを超え、需要が供給に追いつかなくなると予想しています。


<カザトムプロム社>

 カザトムプロム社の2010年の年間のウラン精鉱の生産量は、8,884tuであり、世界のウラン精鉱の生産量の約19%を占めるトップ企業です。2010年の世界のウラン精鉱の生産は、カザフスタンが世界全体のシェアの36%を占め、トップです。次いでカナダの17%、オーストラリアの11%、ニジェール6%、ナミビア6%、ロシア6%となっています。カザトムプロム社は、カザフスタン国営の原子力会社であり、昨今は、ロシア、欧米、日本との結びつきの強化に動いており、原子力エネルギーのトータル企業への転換を積極的に指向しています。日本の東芝からも、同社が保有するウエスチィングハウス社の株式の10%を譲渡してもらっています。


<カメコ社>

 カザトムプロム社、フランスのアレバ社に次ぐ世界第3位(2010年)のウラン精鉱会社です。同社の2010年の年間のウラン精鉱の生産量は、8,630tuであり、世界第3位と言っても、ウラン精鉱の生産量は、前記トップ2社と大差なく、世界のウラン精鉱生産の約18%を占める会社です。同社はカナダの会社ですが、あらゆる核燃料供給事業にかかわっていると言ってよく、さらにウラン事業を専業とする会社と言って良いものです。ニューヨーク証券取引所に上場していますが、その財務内容の良さと、保有鉱山の生産コストの低さから、ウラン(鉱山)業界屈指の優良企業として位置付けられるとともに、ウラン(鉱山)業界における最優良の投資先として、世界の機関投資家、個人投資家からの評価を受けている会社です。


<BHPビリトン社>

 2010年のウラン精鉱量は、3,353tu、世界第6位のウラン精鉱会社です。同社はメルボルンに本社を置く、オーストラリアの会社ですが、世界最大の資源会社であり、その取り扱う鉱石等はあらゆる天然資源に及ぶと言って良いものです。同社は、世界のウラン精鉱生産の約7%ほどのシェアを持つものですが、会社・グループ全体とすると、ウラン事業からの収益は、1%にも満たない数字となっており、このグループ・会社内の位置付けの相違が後述するようにカメコ社との、ウラン精鉱事業への経営戦略の違いとなって、近時顕在化してきています。後述するオリンピックダム鉱山の採掘延期や昨今は、同じオーストラリアのウラン鉱山プロジェクトであるイーリィ-リー鉱山をカメコ社に4億3,000万ドルで売却しています。同社のこれらの行動は、同社が明らかに企業戦略としてウラン(鉱山)事業の縮小にシフトしていることを表すものといえます。

 

<オリンピックダム鉱山>

 オーストラリアのウラン鉱山。BHPビリトン社が権益を保有するもので世界最大のウラン鉱山になる予定のものでした。すなわち、この鉱山の採掘が始まれば、同社のウラン精鉱の生産量の世界的シェアは、一気に17%まで増加すると言われていたものです。しかしながら、同社は、8月下旬、その採掘着手を延期すると発表しています。市況悪化によるものと思われますが、逆に同社によるオリンピックダム鉱山の採掘の延期は、ウランの過剰供給が急速に起こらないとの憶測からウラン(鉱山)市況の急落の回避につながったと言われています。


<キンタイト鉱山>

 キンタイト鉱山は、前述したイーリィ-リー鉱山と同じく、オーストラリアの西オーストラリア州に位置するウラン鉱山ですが、その将来性については、地政学的にも懸念が持たれているものです。実は西オーストラリア州では、2008年まで、ウランの採掘は、環境破壊をもたらすことが著しいとして、法律で禁止されていました。これが州政府の政権交代があったことにより、解禁となったものですが、来年の州選挙では、再度労働党側の政権復帰が濃厚という情勢にあり、州内のウラン採掘がふたたび禁止される可能性が高くなっているものです。

<ユーエックスコンサルティング社>

 米国ジョージア州に本社を置く、世界有数のウラン(鉱山)業界、原子力業界の調査業務コンサルティング会社、同社のホームページを見ると日本に関するスペシャルレポートが年間契約料15,000ドルで販売されています。      

 

 UxC Special Service: Japan Watch

 http://www.uxc.com/products/rpt_jw.aspx

 

 平成24年9月16日現在、同レポートでは、

 ① 日本における原子力発電所の再稼働とストレステストのレビュー状況

 ② 日本における新しいエネルギー政策と原子力発電の位置付け

 ③ 日本における原子力産業の規制の情勢

 ④ 日本における核燃料サイクル事業

 ⑤ 日本における原子力燃料の在庫状況と過剰供給状況に関する分析

 ⑥ 日本におけるウラン燃料のマーケット取引の分析とウラン燃料の市場価格が与えるインパクトの分析

 ⑦ 日本における原子力産業に対する政治的、社会的分析

 以上の情報やその他の関連情報が提供されるという旨が記載されています。


<中国核工業集団公司>

 1988年に設立された国営企業。現在社長、副社長が中国国務院から任命され、民間企業形態で運営されているものです。この会社の特長は、中国における原子力の軍事面、民間面での利用の両方を統括する面を持つことであり、その使命の一つは、軍事面での原子力の利用を民間面に拡充し、中国における多様のエネルギーの源を確保しようとすることにあると言われています。

 10月には、上海株式市場に、新規上場し、約270億ドル相当の資金調達を行い、中国における原子力発電所の建設等の資金需要に応える予定でしたが、昨今の株式市場の低迷、原子力産業への逆風との関係で、市場関係者からは、新規上場時には、半分以下の資金調達しか果たせないのではないかと噂されており、その状況が注目されるところです。

 

<第3四半期、第4四半期の終了近くになるとウランの購入が活況を帯びてくる>

 

  過去10年に亘り、第4四半期のウランの市場価額は、上昇しています。これは、第4四半期直前に前述した「世界原子力協会」の年次総会が開かれることが、大きいと言われています。すなわち、この年次総会でウラン(鉱山)業者等の供給者側と電力会社等の需要者側が一堂に会することにより、市場の先行きに対して、暗黙の同意ができあがるのではないかと言われているのです。

 

<解説した単語・フレーズから読み取れることと今後のウラン(鉱山)市場と原子力産業の未来>

 

 以上の解説を通じ、是非読み取っていただきたいことは、原子力発電所の稼働のための最大のインフラといえるウラン(鉱山)業界というものは、極めて官制のマーケットに近いものであるということでしょう。これは、ウランというものが、核兵器というものと結びつくものであり、もともとは軍需産業品といって良いものであることが大きいわけです。

 

 このマーケットの官制と言う問題は、勢い、登場企業として、カザトムプロム社や中国核工業集団公司のような国営企業の存在をマーケットの分析において抜きにすることができないという問題に及ぶものでありますし、市場価額に関し、前述のとおり、「第3四半期、第4四半期の終了近くになるとウランの購入が活況を帯びてくる。」等と言う、定制的売買の存在と価額の上昇という人為化・定式化した内容も伴うものとなります。

 

 余談ですが、中国の株式市場に詳しい方に言わせますと、前述した中国核工業集団公司の新規上場に関して懸念されている資金調達の失敗ですが、「そのようなことはあり得ない」と当会は、リファーを受けています。

 

 その理由は、「中国の国営企業の新規上場に際しては、購入者不足が見込まれる場合は、最終的に中国国内の年金基金が購入を行うものであり、国営企業の新規上場に際して、公開価格割れは起こらないようにできている。」というのです。これなどは、直接的にウラン市場の官制性を言うものではありませんが、こういった市場(マーケット)の見方を歪めた価額の決定要素が大きく作用するものが、官制市場(マーケット)の特長なのであり、ウラン市場は、こういった要素を多く含む特殊な市場であるということが、重要な特徴といえましょう。

 

 しかしながら、こういった官制面を含みながらも、市場の力、すなわちアダム・スミスが「神の見えざる手」と呼んだ需要と供給により、市場価額が決定するというメカニズムは、無視することはできないものといえましょう。

 

現にその表れとして、BHPビリトン社は、ウラン(鉱山)市場の先行きに対して、懐疑的であり、記事中にもあるように資産の休眠化、売却に走っています。同社の場合、ウラン部門が全体の収益に占める割合が小さく、選択と集中を是とする欧米的経営学の立場に立ったとき、その対応は、企業行動として、全く正しいものといえましょう。

 

 これに対して、専業会社といえるカメコ社は、その潤沢な資金力を活かして、こういった企業からの資産の買い取りに動き、ウラン市場での自社のシェアを一層高め、市場における価額コントロール権の取得を目指しているように思われます。


 さて、こういった企業行動に対して、大きな影響を与える立場にあるのが、日本の動向です。福島第1原発の大事故以前は、日本は、世界の年間ウラン消費の約10%を主に原子力発電所で費消するウラン消費国でした。しかしながら、福島第1原発事故でこの構図は、大きな影響を受けることになります。すなわち、日本国内のほとんどの原子炉が止まってしまい、ウランの費消が止まってしまいました。

 

 世界のウラン(鉱山)業界にとって、前述したユーエックスコンサルティング社が日本の情報として、伝えるメインの7つの情報は、世界の原子力ムラが日本に対して注目する極めて重要な情報といえました。

 

 しかしながら、そのうち、日本における新しいエネルギー政策と原子力発電の位置付けに関しては、とうとう9月14日に日本政府は、今後の原子力政策をめぐり、2030年代の原発ゼロを明記した「革新的エネルギー・環境戦略」を決定し、発表することとなりました。

 

 この決定自体、核燃料サイクルは、再処理事業に引き続き取り組むことを明記した玉虫色のものではありますが、ウラン(鉱山)市場にとって見ると、世界の約10%の市場が将来的に喪失するという状況だけではなく、福島第1原発事故以前は、日本においては、将来的に消費電力の半分近くが原子力発電でもたらされるという構想すらあったものでありますので、ウラン(鉱山)業界や世界の原子力産業において、成長し伸びる市場を喪失したという面においても、極めて重大な影響をもたらす決定が日本政府によって行われたといえるものです。

 

 すでに、この決定に対して、米国の特に原子力産業における反発は尋常でないものがあるわけで、常に弱腰、事なかれ主義の野田政権が、初心を貫徹できるかどうか、ここにおいてこそ、国民各層のしっかりとした監視が必要と思われます。

 

さて、当会として、このユーエックスコンサルティング社が日本の情報として、伝えるメインの7つの情報のうち、今後前記決定を受け、より重要になってくる情報は、日本における原子力産業の規制の情勢であり、日本における原子力燃料の在庫状況と過剰供給状況に関する分析であると考えています。

 

 

 日本政府は2030年代の原発ゼロを目指すと決めましたが、そもそも、すでに当会が何度も指摘しております通り、日本におけるどの原子力発電所も、シビアアクシデント用の放射能除去フィルターすら装備されずに再スタートが企画されているものであり、9月19日にあらたにできる原子力規制委員会が常識的であれば、あれだけの福島第1原発の大事故と全国的に拡大する大地震への懸念がある以上、その装備は、安全性の確保という面から見ても、再稼働には絶対に必要な条件と言ってよく、当該対応において、原子力規制委員会の「鼎の軽重が問われること」著しいものと当会としては考えています。

 

 ちなみに、8月30日に東大の駒場キャンパスで行われたアニーガンダーセン氏の講演会では、同氏は「原子力発電所において安全と安価は両立せず、その安価を実現するために米国においても規制委員会の人事が骨抜きにされた」旨の趣旨の発言をおこなっていますが、我々は、この教訓を傾聴し、原子力規制委員会の骨抜き人事がなされることがないように厳しく監視していくことも重要なことと考えます。

 

 さらに日本における在庫と言う問題ですが、実は、東京電力、関西電力の有価証券報告書を見れば、東京電力、関西電力がすでに長期契約で購入し、在庫としているウラン燃料関係の資産は、東京電力で約7,000億円、関西電力で約3,000億円存在するものなのです。この数字は、世界のウラン市場のなんと1年分の消費量に当たるものであり、日本における原子力燃料の在庫状況と過剰供給状況につき、世界が注目する理由は、まさにここにあるわけです。

 

 すなわち、日本の原子力発電所が稼働できないということは、市場がなくなったというだけではなく、さらに将来的にこの日本の電力会社の在庫が、世界のウラン市場に再度供給され、大幅なウラン市場の市場価額の値崩れを長期的に起こさせる蓋然性が強いことを意味することとなるわけです。

 

 原子力発電に対しては、日本政府による2030年代のゼロでは遅すぎるとして、直ちにゼロとすることを求める国民運動が福島の現状を考慮すれば、今後日本で、ますます盛り上がることは必至でありましょう。その際に、まずは、こういった供給側の事情も考慮し、その主張要求の組み立てや順番を考慮するのも、成果獲得のための重要なファクターとなり得るものと当会としては、考えるものです。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」 これは有名な孫子の兵法の一説ですが、この言葉の意味するところを加味し、戦略を構築することもまた、我々の目指すべき成果の獲得のためには、必要不可欠ではないかと考える次第です。

 

(平成24年9月17日事務局記)