明らかにされてきた福島の子供の甲状腺がんの発症率

(福島県の県民健康管理調査検討委員会からの発表)

 

平成2565日に福島県の県民健康管理調査検討委員会から、福島県における子供(18歳以下)の甲状腺がんの発症状況について発表があり、甲状腺がんと診断された子供12人、その疑いがあるとされた子供17人という数字が明らかにされました。


通常、子供の甲状腺がんの発症率は、100万人に1人程度と言われており、この発症状況の母集団が、約175,000人であるところから、この数値は、極めて高い発症状況にあるといえるように思われます。


(多発性は否定)

甲状腺がんは後述するように、原発事故との因果関係がIAEA側からも認められている疾病であり、もはや誰の眼から見ても、福島第1原発事故との因果関係は疑いようはないと言わざるを得ないと思われますが、同委員会側は、原発事故との間で因果関係に立つ甲状腺がんの発症は、事故後5年目以降の発症であるとか、調査機器等の精密度が向上した結果によるところが大きいなどという主張を用いて、この結果に関しては福島における福島第1原発事故との因果関係のある多発性を否定しています。

 

(メディア ブラック アウトとしての対応)

しかしながら、この子供の甲状腺がんは、現状IAEAがチェルノブイリ事故との関係において唯一原発事故との因果関係を認めている疾病(原発事故からはこの甲状腺がんに限らず様々ながんや疾病が引き起こされると当然考えられており、この立場に立って昨年超党派の議員立法による「子供被災者支援法」が我国では成立しました。

 

しかしながら現状IAEAは子供の甲状腺がん以外の他の疾病は原発事故との因果関係は認められないとしているものです)であり、よってこの発症数値は、IAEAのような国際的な原子力発電所推進機関という地位側においても、当該事故の深刻度を否定できない唯一のテーマといえるものであり、客観的にも福島第1原発事故の日本社会に対する今後の影響の深刻度を計っていくうえで極めて重大であります。

 

そして、あわせて福島第1原発事故の被災者の救済対策の根幹にも直接にかかわるものといえます。よって通常であれば、このような発表は、発表と同時にその数値の大きさから各マスコミのトップ記事とならなければならないはずと思われるのですが、海外から「メディア ブラック アウト(メディアの大停電)」と揶揄されている日本のマスコミにおいては、一部のマスコミがこれらのことに関しては、申し訳程度に報道したのみであり、その事実の重大性を社会に対してきちんと報道発信している記事はほとんど見当たりませんでした。


(多発性を報道する唯一の大手マスコミ記事)

そういった中で、以下の週刊東洋経済のネット記事(http://toyokeizai.net/articles/-/14243)は、唯一その重大性を報道しているものといえ、皆様にお目通しをしておいていただきたい記事だと思われます。特にご注目いただきたい点は、疫学的立場から岡山大学大学院の津田敏秀教授のインタビューを通して福島における子供の甲状腺がんの多発性という事実を我国で初めて報道した大手マスコミ記事といえるものと思料できるところです。


ちなみに著者の岡田広行記者は、福島第1原発の事故発生以来一貫して現場直接取材の正確なファクトに基づく記事を書かれている記者の方であり、当会主催の講演会においても、昨年、本年とパネリスト等をおつとめいただいております。

 

(憂慮される事態)

当会としては、津田教授の弁を受けるまでもなく、今回のこの福島県の県民健康管理調査検討委員会の報告発表は極めて深刻な数値の発表であるという憂慮を禁じ得ないものがあります。前記週刊東洋経済記事における計算においては、この調査に基づく甲状腺がんの発症率は通常の85-170倍としています。

 

ちなみにチェルノブイリ事故後のベラルーシでは、事故から9年目の1995年に年間の小児甲状腺がんの発症者数が最高となり95人を記録しますが、この発症率においても通常の約10倍程度でありますので、福島が現状事故からまだ2年目であると言うことも含めると、この数値(発症率)は驚愕せざるを得ない数値と言えますし、今後発症のピークに入っていくと予想される5年目以降の状況に対して、一体どの程度の罹患者数が出るのかを考えること自体が恐ろしくなります。

 

これらの状況に基づけば、福島第1原発事故の事後的な日本社会への影響度合いは、チェルノブイリの事故をも凌駕する可能性が示唆されていると考えざるを得ないものがあります。

 

なお、もともと、チェルノブイリにおける子供の甲状腺がんの発症については、正式なデーターが取られ出したのが、事故後5年目以降であるため、それ以前の発症者については当局としても、正確にとらえきれていないという事実があり、同委員会側が主張するような原発事故5年目以降の発症説というものには根拠はないと言われています。

 

また今回の福島第1原発の事故においては、ヨウ素131の放出量はチェルノブイリ事故よりは少なかったかもしれないのですが、同じく甲状腺に障害を起こさせるとするヨウ素132がこれも大量に放出されていながら、この内容については、どの程度のヨウ素132が放出されたのかがデーターが全くなく、この被曝数値が福島の子供たちを含めた住民の方々においては検証がされていないという重大な事実があります。


また、甲状腺がんの発症に関しては、ヨウ素系の放射性物質だけではなく、その他の放射性物質も影響を与えると言われており、依然として高い空中放射線量の地域がある福島地区における子供たちの日々の生活自体にも憂慮されるものがあるわけです。

 

(望まれること)

これらのことを踏まえれば、今望まれることは、兎に角早期に正確な状態・情報を当局が把握することだと思われます。

 

福島第1原発事故から、すでに2年以上が経過しているにも過ぎず、まだ当時18歳未満だった福島県民の子供たち約30万人のうち175,000人の健康調査しか甲状腺に関してなされていない等ということは、行政当局の怠慢以外の何物でもないといえましょう。

 

行政当局は、福島県民の生命・健康を何だと考えているのでしょうか。これが基本的人権の保障を高らかに謳う日本国憲法を有する国の治世下において行われている事実だということに対して、我々は大きな驚きを禁じ得ません。我々は、国民として、福島県だけではなく、日本国政府に対しても、言うべきことをきちんと言っていく必要があるのではないのでしょうか。

 

当会は、もはやこの問題は、福島県だけのローカルな問題として捉えるべきではないと考えます。この問題は、福島第1原発事故が今後の日本社会に与える極めて重大な象徴的事案として位置付けられるべきものであり、よってこの問題に対して、福島県が業務の遅滞をするのであれば、国政問題に格上げしてでも、福島県民の早期に全対象者等の健康調査等、特に18歳未満の子供の甲状腺の健康調査が行われ、それが早期に完了される必要性があると思料します。

 

そしてそれを受けて、より重要なことは、その調査により、当局が掌握したデーターについては、あますことなく迅速に公開し、状態が悪いのであれば悪いなりに早期の手立てを、社会がこの原発事故に対して打てる体制を確保することを志向すべきことです。これこそが、何よりも今後の日本にとって社会的にも、政治的にも必要且つ肝要なことであり、こういった体制の整備なくして、日本の再生はあり得ないということを我々一人一人が強く認識する必要性があると当会としては思料するものです。


来るべき参議院議員選挙においては、こういった視点を持てる政治家を一人でも多く国会に送ることが出来るように、有権者一人一人が担う責任は極めて重いものがあると思われます。


(平成25616日事務局記)