<世界のマーケットが見た日本の原子力発電所全廃政策>

 当会は、メディアブラックアウト(メディアの大停電)と欧米で揶揄されている日本の原子力発電関係の報道を補完するために、欧米等で報道され、日本においては、ほとんど報道されることのない、当該情報について、積極的にこのトピックスを通じて、紹介をしてまいりました。

 

 さて今般、日本政府による2030年代の日本国内の原子力発電所の全廃宣言について、世界がどう受け止めたかを、紹介すべき記事を吟味いたしておりましたが、原子力発電の日本における廃止が世界の客観的資本主義体制の中ではどのように評価されているのかは、現在「経団連」を中心に述べられている反対説に合理性があるのかどうかを知り得るためにも、重要と考えるものです。そこで、そのためにも大変興味深い記事が、ニューヨークを中心に配信されている無料投資情報に今回(9月24日付)もありましたので、その大意を以下に和訳し、まず掲載するとともに、当該記事に対する当会のコメントを以下掲載させていただきたいと考えます。

 

なお、記事原文は以下のものであります。

http://beta.fool.com/tdalmoe/2012/09/24/japan-says-sayonara-nuclear-power/12651/?ticker=CCJ&source=eogyholnk0000001

 

(大意)

日本 さようなら 原子力発電所
 福島第1原発の事故から、18ヶ月が経ち、とうとう日本政府は、日本における原子力発電の未来に対して決断を下した。

 

 日本政府は、2040年までに、全原子炉を段階的に廃止することを発表したのである。この決定は、ドイツが原子力発電をやめることを決定したのに続いて、世界の主要国として2番目の決定となる。 福島第1原発の事故の前は、原子力発電は、日本の電力の3割を供給していた。日本政府も、2030年までに、国内の電力の5割を原子力発電でまかなうことを決定していた。

 

 もっとも日本が2040年までに原子力発電所をなくすと言っているが、本当に日本に原子力発電所がなくなるかは疑問が残る。閉鎖されることによって影響を受ける原子炉には、2020年になって、なお未使用の原子炉もある。日本政府がそのような高価で、比較的新しい施設をそんなにすぐに閉鎖することはないだろう。それにも係わらず、日本が原子力発電から徹退するというメッセージは大きなものとして、残ることとなる。

 

 日本の決定は、商品市況に大きな影響を与えるものとなろう。日本は世界で三番目の原子力発電による発電量を有する国である。だから、その喪失は、今後、ウラン市況には、ネガティブなものとなろう。逆に原油、電力用石炭、特に液化天然ガスへの需要には影響しよう。

 

 日本は、現在世界で3番目の原油輸入国であり、中国と同様電力用石炭の最大の輸入国であり、液化天然ガスに関しても同様である。日本の決定は、原子力発電所を建設する会社も含め、良いニュースとはいえまい。これは特に、東芝、三菱重工、日立製作所などの日本の世界的にも有数な原子力発電所の建設企業において真実といえよう。もっとも日立製作所は、前記3社の中で、最も影響の少ない企業となろう。なぜなら、日立製作所においてエネルギー部門の約60%が熱エネルギー部門からの収益であり、残りの約20%が、変速装置や機器のリニューアル部門からの収益であり、残りの20%が原子力関係のものだからである。しかしながら、この日立製作所でさえ、段階的に利益が減少するであろうが、この日立製作所は、興味が持てる投資先になるかもしれない。

 

 鋭い投資家には、他の投資機会も存在する。ウランに投資することだ。今、スポット市場の価額は、2010年10月以来の、低い価額である1ポンド当たり47ドルである。ウランは今年、現在までにおおよそ10%価額が下落した。最高価額を記録した2007年の価額と比較すると65%の価額になっている。原子力発電からの日本の段階的徹退は、カナダのカメコ社のような世界最大のウランの供給者にとっても悪いニュースである。 同社は世界のウランの生産の16%を占める会社であり、4億3,500万ポンドのウランの確認埋蔵量を保有する会社である。

 

 ウラン(鉱山)会社は、年毎に高コスト会社から、市場から消えていっている。これらの鉱山会社の資産は、カメコ社が西オーストラリアで取得した、イーリーリーウランプロジェクトのように買収されていっている。

 

 ドイツや日本の脱原発の決定によって、原子力産業は、新興国の貪欲なエネルギー事情において、彼らが原子力に力点を再度置くまでの時間を待つことはできない。このことはカメコ社の株主においては、長年株価が低迷することを意味しよう。

 

 ニューヨーク証券取引所に上場されているETFである「マーケット・ベクターズ・ニュークリアーエナジー」や「パワーシェアーズ・グローバル・ニュークリアーエナジー・ポートフォーリオ」のホルダーにとっても、これは良いニュースとは言えまい。

 

 この2つのETFは、日本の関係株式の組み入れ比率が良く、それぞれ前者は28%、後者は20%の組み入れ比率を持つものである。加えて、両方とも高いウラン(鉱山)株式等の組み入れ比率を持ち、それぞれ前者は28%、後者は18%の組み入れ比率をもつものである。

 

 日立製作所を加えた他の日本の株式会社においては、日本の脱原発政策により、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事という大商社を含め利益がもたらされよう。

 

 これらの会社のすべてがシェール石油や米国における天然ガスビジネス、世界中からの液化天然ガスの調達業務に注力し、エネルギービジネスに参入している。 例えば、三菱商事においては、エネルギービジネスからの純利益は、12億5千万ドルを超える利益をあげているが、これは1年前の四半期の1期分の会社利益に匹敵する。

 

 液化天然ガス事業や、他のエネルギービジネスは将来の日本においては、より大きな社会的役割を担うであろう。日本政府が脱原発政策を選択したことにより、投資家諸氏は、原子力産業に社会の流れが戻ってくることを期待するよりも、その政策変更により利益を得れる会社に投資するほうが、合理的といえるのではなかろうか。

「The Motley Fool」 By Tony Daltorio - September 24,2012 

 

(当会からのコメント)

 

(世界がどう見ているか)

 この記事をお読みいただくまでもなく、今回の日本政府による2030年代の原子力発電所全廃の宣言は、欧米においても、実現については、大変懐疑的であります。

 

 実際、この宣言をなした翌週には日本政府は、これの閣議決定を見送っているわけでありますし、米国や経団連から激しい反発を喰らうと全くの腰砕け状態となり、枝野経済産業大臣に至っては、2030年代に原子力発電所を廃止すると言っていながら、建設中の原子力発電所2基については建設を継続させるなどという支離滅裂さが浮き彫りになっています。

 

 当会から、見ると今回の日本政府の2030年代の原子力発電所廃止宣言は、国民の圧倒的脱原発の声に驚いた政府が次期の衆議院議員選挙の民主党への支持確保のために、リップサービス的に行ったものというのが、明らかになってきつつあるように思えます。また、各所に国民に対するレトリックも存在するといえると考えます。

 

 そのレトリックが如実に明らかになっているのが、原子力発電所の廃止時期といえると思っています。日本の報道機関は、政府発表のとおり、この廃止の時期について、2030年代という表現をすべて用いていますが、海外の報道機関等においては、本掲載記事に見るとおり、2040年という数字をほとんどの配信や報道機関が用いています。

 

 2030年代ということは、言い換えれば2040年までにということですが、2030年代と言われれば、2030年での全廃があり得ると人は取るわけであり、前者と後者ではこれを読んだ時の日本政府への期待や、やる気に対する受け止め方が、大きく違うことは明らかといえます。

 

 世界の報道機関は、原子力発電所の段階的廃止と政府が言った場合、その実現性には大きな困難が伴うことを過去の経験より見越しており、たくみに2030年代という日本政府のレトリック的発表を排除し、2040年までにという表現に置き換え、当該事象の実態を客観的に読者等が見誤ることのないように適切に加工したうえで、記事の作成に関しても努力をしているといえましょう。

 

 日本の報道機関が御用報道機関と言われる由縁が、このことひとつからも明らかになるといえるのではないでしょうか。

 

 今後、当会としては、この原子力発電所の全廃の時期に関しては、日本政府発表の「2030年代か」、あるいは国際的報道基準の「2040年までに」かは、その表現上問題になると思料いたします。

 

 当会は、今後も本トピックスを通じて、日本の原子力発電所等の問題の欧米等における報道・配信を継続して皆様にご紹介していきたく考えるものです。そこで、この全廃の時期に関しては、国際的報道基準の「2040年までに」を今後の本トピックス欄での表現の統一基準にしていきたいと考えております。

 

(当該記事への投稿から) 

 ところで、原子力発電所の段階的廃止という課題については、前述したとおり、世界的にも過去の経験則上大きな困難が伴うものといえます。

 

 本掲載記事の投稿欄にはある閲覧者からの投稿が載っており、チェルノブイリ事故後行われたスウェーデンにおける国民投票においては、最低でも10年後までには、スウェーデンでは原子力発電所の全廃が謳われていたはずだが、未だ実現されていないということが記載されています。

 

(スウェーデンの原子力発電所政策)

 スウェーデンは初代のIAEAの事務局長を輩出した国であり、また国土は花崗岩地帯が多く、かつては世界有数のウランの産出国でした。そのため、原子力発電に関しては、推進国家であったわけですが、チェルノブイリ事故後、方針転換が行われました。

 

 この点、投稿主が指摘するようにスウェーデンでは、未だ複数の原子力発電所が稼動はしていますが、現在のスウェーデンにおいては、老朽化した原子炉の建て替えは認めるが、政府は経済的支援を一切せず原子力発電の振興の是非は、経済合理性に基づく市場判断に任せるという形を取ると同時に、自然エネルギーに対しては、政府が経済的支援をするという立場で政策が遂行されています。原子力発電所というもの自体が、国家による資金的補助があってはじめて成り立つという実態がある以上、このスウェーデンの方針は、脱原発を進めるうえで、その存否の判断を完全にマーケットに委ねるという意味で極めて資本主義的には合理的な政策といえ、仮に2040年までに国内の原子力発電所の全廃を日本が真に目指すのであれば、このスウェーデンのスタイルは、何らか思慮に値すべきものと当会としては考えております。

 

(経団連の自己矛盾) 

 さて、前記掲載記事において、最後にコメントしておきたいことは、原子力発電は、今回の日本の政策転換により、世界の資本主義体制の中における存在意義に関し、少なくとも先進諸国においては、その合理性が失われたと世界の資本市場は見ています。これこそが、今回の日本政府による段階的原子力発電所廃止という宣言の意義といえます。そして、これを受け、投資家はその変化に投資すべきだと説くわけです。曰く「日立製作所を加えた他の日本の株式会社においては、日本の脱原発政策により、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事という大商社を含め利益がもたらされよう。」そしてこれを受け、「日本政府が脱原発政策を選択したことにより、投資家諸氏は、原子力産業に社会の流れが戻ってくることを期待するよりも、その政策変更により利益を得れる会社に投資するほうが、合理的といえるのではなかろうか。」と結びます。

 

 欧米の資本市場は、極めて合理的且つドライですので、市場において生き残れる者は、「変化できる者」だと捉えます。これがダーウィンの「進化論」の資本市場への介在といえ、投資家の醍醐味は、この変化できる者に投資することこそが、妙味だと捉えます。

 

 いまや世界の先進諸国の資本市場においては、一番妙味のある投資は、この変化に乗れる企業であり、その候補が、掲載した記事においては、日立製作所であり、住友商事であり、丸紅、三井物産、三菱商事であると説くわけです。

 

 しかしながら、考えてみるとこれらの企業は、脱原発を強力に否定する米倉会長をトップとする「経団連」の重鎮企業ばかりであり、脱原発が進むことで、利潤が逆に厚くなる主要企業がこれらであるという点は、「経団連」自体が極めて大きな自己矛盾を抱えている組織であることが、ここより明らかになるといえましょう。

 

 当会の役目の一つは、このホームページ等を通じ、日本国内の報道からは、明らかにされないこういった原子力発電に関する自己矛盾等の情報を閲覧者の皆様に正確に伝えていくことにより、正しい事実の認識を進め、情報の偏在化を防ぎ、福島の悲劇を2度と繰り返すことのない社会の確立に貢献することだと考えています。

 

(平成24年10月14日事務局記)