東京オリンピックの決定と「ジャパンタイムズ」に掲載された福島第1原発事故をコントロール出来ない日本への米国からの手紙

56年ぶりの東京オリンピック)

2020年のオリンピックが、98日未明東京に決定した。

福島第1原発からの拡大する汚染水問題という国際的課題を抱えているため、苦戦を予想された東京であったが、開票結果は大差での決定だった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130905-00000046-asahi-soci

 

(対抗馬の問題)

この結果に対しては、違和感を感ずる向きもあるだろうが、当会事務局としては、このような結果になることは、一定予想できるところだと思っていた。

何と言っても、今回の選考については、対抗馬となるイスタンブール、マドリッドとも、弱点が有りすぎたと言える。

 

有力対抗馬だったイスタンブールだが、エジプトの騒乱、そして隣国のシリアの内戦の激化という問題があり、いつ地域が再度の中東戦争に突入しかねないと言う点で、全く予断を許せる状況ではなくなっており、この状態で、選考を迎えること自体が極めて不利な状況にあった。

 

また、マドリッドであるが、そもそもスペインは欧州の債務問題の主役であり、さらに同国では、すでにバルセロナ大会を行っている。こういった状況の国の首都がオリンピックを開催することには、大きな無理があることも、明らかであった。

 

(国策としての後押し)

翻って東京であるが、今後の日本としては、時間の経過とともに明らかになってくるだろう福島第1原発事故を始めとする様々な深刻な政治問題を国内向けに中和させるためにも、日本国民向けの大規模な「サーカス」にあたるものの誘致は、為政者としては是が非でも必要と考えることは当然のことであり、オリンピック誘致に関しては、国の総力を出来得る限り挙げて後押しをするだろうと思われたが、案の定、安倍首相はG20を中座してまでも、ブエノスアイレスに駆けつけ、スピーチを行い決定の後押しを行ったものである。

 

(日本政府にとって本当に好都合だったのか)

こういった環境と自分のことしか考えていないとの陰口を受けるIOC委員による投票というものが、複合すれば、こういう結果に落ち着くことは、ある意味想定の範囲内とも言えるものであった。しかしながら、当会事務局として指摘しておきたいことは、この決定は、本当に日本政府にとっては、好都合だったのかということである。

この決定により、今後福島第1原発問題は、従来以上に、世界の耳目を集めることになることは、確実となったからである。

 

福島第1原発問題については、今は、海洋汚染問題がスポット・ライトを浴びているが、この問題のもう一つの焦点には、脆弱化した4号機の使用済み燃料プールの問題もあることを忘れてはならない。海洋汚染問題もこの4号機の使用済み燃料プールの問題もともに極めて解決のむずかしい問題であるが、誘致を成功させた以上、今以上の悪化は、絶対に許されないものとなったわけでもあり、これは日本と日本政府の立場を国際的に一層追い込むことになったと思料される。

 

(国際社会の常識)

重要なことは、国際社会の常識は、この福島第1原発事故に関する放射能汚染等の問題に関して、311以前の常識で評価を行なっていると言うことであり、今後もそうであると言うことなのである。すなわち、多くの日本人は福島第1原発の事故から2年以上が経ち、この間の為政者とこれを擁護する主要マスメディアの必死とも言える安全性の刷り込みと真実を見せないと言う各種の施策により、この問題について、鈍感になるとともに、これらのことを考えないということで、精神の安定を図ろうとしているように見受けられるわけである。

 

しかしながら、これらの刷り込みを受けていない国際社会から見れば、我々の現在の対応については、理解しがたい姿勢と映るといえるであろうし、当然多くの外国人にとって、日本と直接的な利害関係に直面したとき、この従前の常識に基づき対応することは当たり前のこととなる。

 

この点で、812日付の日本国内向け英字新聞である「ジャパンタイムズ」に、掲載された米国オハイオ州在住の教師からされたある投書は、まさにその常識に基づき日本が評価され、結論が下された(自大学の学生の日本への留学の推奨をしない)ことを示すものと言える。

 

この投書内容は、下村文部大臣に対して出された書状そのものを投稿する形式を取っているが、福島第

1原発事故後の日本に対する率直な国際社会からの評価と言う意味でも極めて重要なものと言え、当会としても、本内容は、広く日本国民が知るべき内容であろうとも思料するので、当該内容の大意を和訳し、以下本トピックス欄への掲載を行いたいと思う。

http://www.japantimes.co.jp/community/2013/08/12/voices/radiation-fears-forced-me-to-postpone-japan-visit-by-u-s-students/#at_pco=tcb-1.0&at_ord=3

 

 放射能汚染により、学生の貴国への留学を認めることができなくなっている。

 

 

日本国 下村博文文部大臣殿

 

私は、「原則的に」貴国が企画している貴国への外国人留学生の受け入れを現在の14万人から2020年までに20万人に増員する計画に対して、強くサポートをしてきた立場にある人間であることをまずは、ご理解していただきたく思います。

 

この貴国の企画は、すべての関係者に対して、豊かさを与えるであろう素晴らしい計画であると私は考えています。

 

もっとも、この件に関して、私は前述のとおり「原則的に」という言葉を使わしていただきました。

この言葉を使わざるを得ない訳は、私が本年4月に私の教師としてのキャリアの中で最もむずかしい判断の一つをせざるを得なかったことに由来します。

 

その判断とは、私が私の勤務する大学当局に対して、本年の秋に予定されている貴国への前記のプログラム、すなわち日本への海外留学プログラムについて、当大学からの学生の派遣を延期するように申し入れると言う対応をしたことです。

 

私はこの行為をしたことに対して、一方で貴国に対して深い自責の念を持ちます。しかしながら、私として私の良心に従えば、これしか選択肢はありませんでした。

 

すなわち、私は本年3月に私が学んだニューヨーク・アカデミーの福島に関連したメディカル・セミナーに2日間に亘り、始めて参加しました。そしてこのセミナーで福島第1原発からの放射能汚染の進行する危険性について学びました。そして私がここで得た知識は、私の住んでいるオハイオ州イエロースプリングスに戻ったのち、ある事実により、強く確信となるに至ります。

 

それは、昨年、この海外留学プログラムで貴国に留学した女子学生から、ある重大な情報を得たことに依ります。

 

彼女は、貴国に留学中、すべて放射能汚染により生ずる症状と言える吐き気、鼻血、頭痛というものに悩まされたというのです。

 

これを聞いて私は行動せざるを得ませんでした。

今年派遣する学生は、この海外留学プログラム中の個人的調査目的のパートで、東北地方を訪れることになっていました。しかしながら、現在の状況では、東京から北の地域に学生が立ち入ることを禁止する合理性があります。

 

この海外留学プログラムを検討する際、残念ながら、私は、福島第1原発からの大量の放射性物質による汚染の危険を憂慮する日本内外の原子力や医学の双方の専門家からの、警告を留意せざるを得ませんでした。

 

このような理由で、私は遺憾ながら、私が学生を被曝させることができない特に妊娠適齢期にある女子学生について、放射能汚染の危険な可能性にさらすことが出来ないと結論付け、大学当局に対して、その申し入れを行ったものです。

 

悲しむべきことに、この申し入れ後も福島第1原発の状況は、ますます悪くなっています。

つい先日東京電力は、2011年の春の事故のすぐ後に測定されたのとおおまかに同様な1リットル当たり2,350,000,000ベクレルのセシウムが福島第1原発の周辺の試験井戸からの地下水から検出され、それが太平洋に漏れ出していることを認めるに至っています。

 

言うまでもなく、セシウムのこの量は、日本の規制基準の数百万倍の量です。

このような、放射性物質がコントロールされることなく、太平洋に漏れ出している状況下においては、福島地域への立ち入りをしないという対応だけでは、放射性物質からの危険を貴国に留学した学生が回避することはむずかしいと思われます。

 

例えば魚類は、海産物としての生物蓄積がなされるものであり、今以上に汚染された海に住むことになっていきます。そして大型の魚類は、その海での汚染された魚を食べ、さらに複数年に亘り、広い地域を移動しあうわけであり、汚染が凝縮されることになりましょう。日本政府だけではなく、どのような政府においても、この環境下では、すべての市場で流通する魚について、その安全性を確認していくことは、不可能でありましょう。

 

私が貴国からの海外留学プログラムにおいて、さらに重大な問題だと考えていることは、2013年度のプログラムにおいては、留学生が貴国に滞在する間、留学生は、コメを主食にすることになりましょうが、724日付の「福島民報」が伝えるところによれば、日本政府は、福島県で生産されたコメについて、1キログラム当たり100ベクレル以下の汚染状態のものについては、政府が買い取りを検討しており、買い取り後、全国的にそれを売却して市場に流通させる意向であるとのことを知ったことです。

 

下村大臣殿、あなたは福島第1原発問題の担当閣僚ではないかもしれませんが、安倍内閣の一員である以上、これらの生じている問題に関して、効果的な対応が行われるように国政に対して、意見をすることをお願いしたいのです。

 

私として、もう一つ明確に日本政府に対して、お願いしたいことがあります。それは、東京電力が行っている無能と言える福島第1原発への対応責任を政府として引き受けていただきたいと言うことです。

そして、費用がいくらかかろうとも、世界中のこの問題に対する英知を結集させ、環境への追加的な放射性物質による汚染を完全に止めることを行うべきと言うことです。

 

言うまでもなく、これらの政策は、日本国民の健康をまず真っ先にそして将来に亘り、守ると言う観点から実施されるべきであります。しかしながら、この提言がなされることは、私のような留学生を貴国に送る立場の人間が、再度貴国への留学を推奨するための要件でもありますことを付け加えておきたいと思います。

 

そのような要件が満たされる日が再度来ることを私は、切望しています。

 

オハイオ州 イエロースプリングス

ブライアン ビクトリア

 

 

<当会からのコメント>

(投稿内容の判断の妥当性)

本投稿文は前述のとおり、812日付のジャパンタイムズの投稿欄に掲載されたものだが、

読了後、閲覧者の皆様は、どのような感想をお持ちになっただろうか?

米国人として、今の日本の放射能汚染問題に対する行政及び福島第1原発問題に対する対応について、驚くほど正しく実態を認識しており、教育者として、学生を日本に送り出す立場として、極めてまともな判断をこの投稿者は行っていると当会事務局としては、思料する。

 

(投稿から見るべきこと)

この投稿より明らかになることは、今回の東京へのオリンピックの招致成功は、やはり、IOC委員と言う国際社会の中にあっても異質な人々の間でだからこそ、決定できたものなのであり、安倍政権にとって、この招致成功によって、東京の安全性が国際社会からも評価されたとすることなどは、絶対に出来ないと言う点であろう。

 

(不合理性の証明)

実際我国においても、福島第1原発事故以前には、国際的な常識に基づき、年間累積被曝量が1ミリシーベルトを超える場所には、人間が住んではいけないことに法律上もなっていたものである(平成24215日付本トピックス欄参照)し、放射性物質の含有量が1キログラム当たり100ベクレルを超えるものは、放射性廃棄物であった。

 

これらが福島第1原発事故以後は、どうなったのか?為政者は、自らの立場と原子力ムラ(Nuclear Establishment)の権益を守るため、年間累積被曝量の規範を骨抜きにするとともに、放射性廃棄物の基準を逆に食品の安全性の基準値に置き換えると言う到底考えられないような不合理な行為を行ってきたものである。ちなみにこの1キログラム当たり100ベクレルという問題については、単に食品だけではなく、当会が他の市民団体と合同で実施した本年1月の身近な(町田市域内)土壌汚染の調査結果(平成25124日付本トピックス欄参照)からも明らかなように関東地域での居住においては、自らの住宅の周辺地域は、まず従前の基準ならば、放射性廃棄物とされる汚染土壌に囲まれた土地となっている可能性が高いものともなっていることが明らかになっているし、チェルノブイリ事故と異なり、被災地域からの域外への交通や人々の行き来が事実上フリーになっている現状は、当会の過去2年間に亘る空中放射線量の計測結果からも明らかな通り、国内の主要幹線道路や交通機関において、突発的に高い放射線量を検出する由縁となっていると思料される。

冷静になって考えれば、このような実態を有する国が、安全な国だとは、到底言われるはずはないと言えよう。

 

(直ちに健康に影響しない)

しかしながら、これらの事実が実際に健康に影響するのは、一定の時間がかかることを良いことに、為政者と主要マスメディアは、前述の通り必死の安全性の刷り込みと真実を見せないと言う各種の施策により、問題が深刻な社会的問題に昇華することを日本国内では今までは、何とか防いできたというのが、実態であったといえる。これに対して、国際社会は、日本の放射能汚染問題と福島第1原発問題に関する対応について、従前の常識すなわち3・11以前の常識に基づき客観的判断をしており、そして加えて日本内部の実態が今や正確に海外に伝えられているということが、極めて重要な事実として投稿記事からは読み取れるものとなる。

 

(政府処理の国際的公約化)

この投稿自体は、この他にも多くの示唆に富むものと言えるが、安倍首相が今回のIOC委員会での最終スピーチで何らの合理的根拠も無く、世界に対して、この問題の安全宣言を行った以上、少なくとも、投稿者が要望する日本政府が福島第1原発の事故処理の責任を東京電力任せにせず、政府として責任を負うとすることが、世界的公約になったと言えるであろう。この点、安倍首相は、今後帰国後に、詭弁を弄して、そのような意味を含むものではないとの主張を繰り広げるであろうことは、十分予想できることなのであるが、国際的常識から言って、一国のトップが安全性のギャランティーや対策の提起を世界中に中継される場で、公に行った以上、日本政府が政府として対処に責任を持つと言うことを事後否定できなくなったことは、明らかである。

 

この意味から見れば、2020年の東京オリンピックの決定は、財政上の莫大な負担等が出ることを憂慮し、事故の処理を東京電力任せにして、逃げ回っていた日本政府を福島第1原発事故の事後処理の当事者に座らせるための国際社会からの深謀遠慮であったと言う見方も、ことここに至るとあながち否定できないのではないかと考えられるものなのである。

(平成2599日事務局記)