日本の参議院議員選挙を受けウラン関係銘柄に仕手株まで現れたニューヨーク市場

(ウラン関連株式の値上がり

日本の参議院選挙の結果を受け、注目されたニューヨーク証券取引市場(NYSE)のウラン関連株式の株価の値動きであるが、選挙日翌日の722日は、前週の719日の状況と比較して、市場指標であるS&P500指数及びダウ工業株指数とも、ほとんど横這いの状況であったのに対して、総じてウラン関連株式は値上がりをした。

代表的指標銘柄であるカメコ社は、19日の終値が1株当たり21.23ドルであったが、22日の終値は、1株当たり21.98ドルとなり約4%の上昇を見た。

 

(翌日には多くが値下がりに)

もっともこの比率は、自民党の大勝を受けた昨年末の衆議院議員選挙翌日の同社の値上がり率とほぼ同一である。そして似通ったことはさらにあり、同社株式を始め、一旦上昇したウラン関連株式であるが、値上がりは短期間しか持たず、翌23日には多くが早くも下落を始め、カメコ社の株式も、23日の終値は、19日の終値の1株当たり21.23ドルに戻ってしまった。

 

(注目された会社)

そういった中で、上昇を継続し、しかも急騰に等しい上昇を行った銘柄があった。この株式は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)全体の中でも注目を集め、あのロイター電においても、記事が世界に配信される銘柄となった

http://www.reuters.com/article/2013/07/23/us-usec-shares-idUSBRE96M0ZI20130723?feedType=RSS&feedName=globalMarketsNews&rpc=43。)。

 

銘柄の名前は、USEC社。同社は1993年に設立されたメリーランド州ベテスダに本社を置く、電力会社(日本の電力会社も含む)に対して原子力発電用のウラン燃料を供給する規模的に言えば小さな会社である。同社は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場はしているものの、業績はさえず、上場維持のために、7月初旬に25株を1株にするという株式併合を行ったばかりの会社なのであるが、その後、株価自体何ら企業業績の改善が見られる状況にはないのに、突然急騰を始め、722日には1日で株価が、19日の1株当たりの株価の終値6.05ドルから倍近く値上がりし、終値が1株当たり11.98ドルになったものである。

 

(ロイター電の要旨)

この辺りの事情について、先の723日のロイター電では、市場関係者の解説を加え、配信記事を作成している。以下当該記事の要旨を和訳してみたい。

  

                 <ウラン関連会社のUSEC社の株価が、踏み上げ相場により再度上昇>

 

723日 ニューヨーク ロイター電)

火曜日、小規模のウラン関連会社であるUSEC社であるが、火曜日(723日)には上昇前の株価から4倍の株価まで急騰し、8日間連続の株価上昇となった。

 

市場関係者によれば、この上昇は、信用売りを行った投資家が株価の上昇により一層の損失を拡大しないようにするための同社株式の買い戻しに対して生じた踏み上げ相場によるものであるとのことだ。

 

22日月曜日の終値から、98%その株価は、1日で上昇した。過去8日間を通じてメリーランド州 ベテスダに本社を置く同社の株価は、331%上昇したことになる。

 

ニューヨークのLEK証券のセールス、トレーダー部門の役員であるフランク・デービス氏によれば、この上昇は、踏み上げ相場の拡充とそれに気が付いた回転速度の速い資金の流入によるものであると言う。

 

ここ数日間、何人かのアナリストは同社株式の買い推奨を出し、その理由として日本の参議院議員選挙で原発推進政党が多数を占めるであろうという点をあげていた。

 

しかしながら、ほかのウラン関係株式は、同じような急騰は見せてはいない。

回転の速いお金がこの銘柄に投資されている以上、上場株式数から見る限り、完全な踏み上げ相場になっていると同氏は言う。

 

もっともウラニウム・リソース社は、過去8日間で、38%上昇し、火曜日1日では、11%上昇し、終値は13.55ドルになった。

 

カメコ社は、過去数日の株価はほとんど変わらないが、火曜日は3.1%下落し、121ドル30セントとなった。

 

関係筋によれば、USEC社の発行済株式総数の15%が借株となっていると言う。

6月初旬と比較して借株数は、約40%の増加であると言う。

 

この6月初旬後、同社はニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場維持のために、株価を1ドルを超える形とするため、株式25株を1株に併合する処置を取った。株式併合を行う会社は普通何点かの問題を抱えており、株価は、併合後も下落を続ける傾向にある。

 

同社の過去50日に見る平均の1日当たりの平均売買高は、19万株であるが、この日は、おおよそ300万株のUSEC社の株式が、1日で売買された。22日月曜日の終値を基準とするとUSEC社の株式の時価総額は、6,000万ドルとなり、先週末と比べて2倍になった。

 

ETFであるマーケット・ベクターズ・ニュークリア・エナジーは、この日は、0.2%下がって、46.77ドルとなった。

 

<当会からのコメント>

(ファンダメンタルに関係しない思惑による上昇)

株式の売買においては、現物取引と言うものと信用取引と言うものがある。

 

信用取引は、さらに信用買と信用売という取引に分かれるが、今回の場合、この信用売取引に係る思惑等によって、USEC社の株式は急騰を重ねたようである。

 

(上場廃止の危機)

同社の株式は、業績悪化に伴い、1株当たりの株式が1ドルを割っていた。

ニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場ルールによれば、1株当たり株価が、一定期間1ドルを下回るようであれば、上場廃止となる。

 

この点は東京証券取引所と大きく異なる(東京証券取引所の場合、上場廃止になるのは、発行済株式総数の時価総額が一定金額を割った場合である)。

 

欧米人は原理原則を徹底重視する人々であるから、証券市場の存在意味の原則が、上場会社の資金調達の場所の提供にあるはずだから、1株当たり1ドル以下になった株式などに、どんなに発行済株式総数が多くても、資金調達の効率的需要は無いと考え、一定期間後上場廃止とするものなのである。

 

(株式併合を実施そして株価の急騰)

USEC社はその上場廃止を避けるために、25株を1株にして、1株当たりの株式価額を1ドル以上にすると言う、いわゆる株式併合と言うテクニックを使い上場維持を図ったのである。

 

さて同社は、この株式併合を7月2日に行うのだが、併合直前の71日の1株当たりの終値は0.29ドルであった。そして併合により、72日の初値は、1株当たり7.23ドルとなる。この後、同社の株式は、まさに掲載記事も指摘するように下落基調となり、78日には、1株当たり2.60ドルまで売り込まれる。

しかしながら、711日より変化が起こり、株価が上昇しだすのである。

そして、連続7日間に亘って上昇を継続し、日本の参議院議員選挙の結果が出た、722日の市場において、株価は、急騰するのである。

 

(一連の経緯)

前週の719日の終値が、1株当たり6.05ドルであったものが、722日には、日本の参議院議員選挙における自民党の大勝のニュースを受け、大商いとなり、1日の売買高は、約388万株となり1株当たりの株価は、高値15.8ドル、終値11.98ドルという数値となった。

 

この後、同社の株式はさらに、連騰を続け、726日には、これも1日の売買高約387万株となる大商いとなり、終値で1株当たり19.21ドルとなるとともに、翌週の729日も大商いが続き、1日の売買高は、約384万株となり、1株当たりの株価は1株当たり高値29.12ドル、終値1株当たり29.02ドルという数値をつけた。

 

78日の最安値1株当たり2.60ドルから見て、この日の高値で計算すると実に約3週間で11.2倍もの値上がりを記録したものである。

 

そして、その後は、株価自体乱高下状態に入り、その中でも、総じて値下がり基調にあるようであり、82日の終値は1株当たり17.27ドルまで値下がりしてきている。

 

(マーケットは懐疑的)

さて、日本の原発推進政党と言っても良い自民党の参議院議員選挙の大勝と言う結果を受け、福島第1原発事故前は、世界のウラン需要の10%を担っていた日本のウラン需要復活への期待から、多くのウラン関連銘柄の値上がりが、前述したとおり、722日の日には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)では、生じるわけであるが、その値上がりも、ほとんどの銘柄で長続きはしなかったわけである。

 

冒頭お示ししたカメコ社の株価の値動きが、その典型的なものと言えるであろう。

つまり、世界のマーケットから見て、いくら自民党が大勝したからと言っても日本における原子力発電所の多くの再稼働の道のりは、極めて険しく、遠いものがあるとの認識にあると言うのが、その大勢の理解と言えるだろう。

 

(日本の常識は世界の非常識)

そもそも福島第1原発の事故には不明な点が多すぎ、また、いよいよ住民等の健康障害も顕在化する状況であり、このような中で、到底まともな頭であれば、原子力発電所が今後も世界のエネルギー産業の中心を担えるものとして、投資の対象と考える投資家が多くなり得ないことは当然である。

 

日本の経済評論家の半数以上は、未だ原発推進に積極的であるが、何よりも経済と社会の実勢を如実に表すと言われる証券市場、特に世界最大の証券市場であるニューヨーク証券取引所(NYSE)では、まさに原子力発電の将来性を、消極的に捉えていると言えるわけであり、これが現在の世界の常識と言えるものなのである。

 

だとすれば、現在の安倍政権が行っている原発推進政策が、如何に世界の趨勢からも乖離しているものであるか、またそもそもの福島第1原発事故を起こした国が、何故原発推進なのか、世界のマーケットからも、その選挙結果にノーを突きつけられたといえる結果が、ニューヨーク証券市場(NYSE)のウラン関連銘柄の選挙日後の早期の値下がりと言えるのではないかと思われるのである。

 

(USEC社急騰の訳)

そういった中で、何故このUSEC社は、連騰を続けたのであろうか?

前述した通り、同社の株式は72日に株式併合をしている。

 

掲載記事中にもあるように株式併合をしても、株価は、下落基調を続けることが多い。

なぜならば、この会社の株式のように、業績的に何ら好転を見越せないのに係らず、ただ上場維持を目的としたとしか見えない株式併合をした場合は、株式併合により一度形式的な1株当たり株価が上昇することにより、下落幅を得られ易くなり、信用売の絶好の標的とされてしまうのである。

 

(信用売とは)

前述したとおり、株式の売買においては、現物取引と言うものと信用取引と言うものがある。

信用取引は、さらに信用買と信用売という取引に分かれるが、将来的に当該銘柄の株価が下がると見越した投資家は、当該株式を専門の業者から、一定期間借りる約定を交わし、借りたと同時に、証券市場で売ってしまう。

 

そして予想どおり、当該株式が下がれば、その下がった段階で、買い戻しをして、貸主に当該株式の返却をする。投資家は、売った時点と買い戻した時点の差額をさやとして利潤にすることが出来ることとなるわけであり、これが信用売による株式投資と言うものとなる。

 

この場合、思惑通り、株価が下がってくれれば利潤が出るが、仮にこれが値上がりするようなことになれば、損失が出ることになる。

 

(踏み上げ相場とは)

ある銘柄で信用売の株数が嵩むと将来的に株式を大量に買い戻さなければいけない取引が出ることとなるわけであり、当該株式には、将来的な需要が見込まれる。

 

ここに眼をつけて逆に仕掛ける投資家もいる。つまり、この信用売を行っている投資家が将来買戻しをしなくてはいけないことに眼をつけて、短期に当該株式を急騰させ、当該急騰価額で信用売の投資家に当該株式の買戻をさせ需要を起こし、高値を維持させると同時にその間に自らは、安い段階で買い集めておいた当該株式を売り抜け、利潤を確保するという手法を取る投資家がいるのである。

 

まさにこれは、信用売を行っていた投資家に対して、ケンカを売ることに等しく、こういった相場を称して、後述のとおり仕手戦と言われる理由がおわかり頂けると思う。ちなみに、信用売については、株式の貸主に対して、借主たる信用売を行った投資家は、利息に当たる借り賃を毎日支払うことになるので、この負担から、多くの信用売を行う投資家は、短期の決済を志向することになる。

 

よって当該株式が急騰するようであれば、損失を拡大するまいとして、通常は、早期の手仕舞いを行う(つまり値上がりした価額で買戻す)ので、需要が沸き起こり、大商いとなり、当然さらに当該株式の株価が上昇し、急騰相場が演じられることになる。

 

このような市場の動きを日本では、踏み上げ相場と言い、またこれを仕掛ける投資家は、中心となる者が通常は要ることから、この中心者を能のシテに見立て、このような相場自体を仕手相場、または仕手戦というとともに、この対象となる株式を仕手株と言うのである。

 

(米国版仕手戦)

ロイター電の解説するように、今回のUSEC社の急騰は、まさにこの踏み上げ相場であり、同社の株式が仕手株となり、仕手戦が展開されていることを伝えるものとなっている。

 

もっとも彼我の言語や歴史が違うことにより、さすがに仕手戦と言う名称こそ、使われてはいないが、内容は一緒であり、米国版の派手な仕手戦が繰り広げられたのが、722日以降の同社株式の状況と言えるのである。

 

(USEC社の実態)

実は、同社については、冒頭に電力会社用のウラン燃料を製造する会社であるとの紹介をしたが、より具体的な利潤の多くは、あの「メガトンからメガワットへプログラム」(「メガトンからメガワットへプログラム」については、以下の昨年817日付の本トピックス欄を参照http://sokutei-machida.jimdo.com/ニュース/米国投資情報から見るウラン/ ください)に基づき、ロシアの解体核から、米国における原子力発電所用のウラン燃料を作成すること及びウラン濃縮事業等からもたらされているものであった。しかしながら、この「メガトンからメガワットへプログラム」は本年をもって終了するものであり、こういった背景や福島第1原発事故後の原子力発電所用のウラン燃料の需要減をもって、同社は、米国内に現在存在する唯一の民間企業のウラン濃縮工場であるケンタッキー州のパヂュカ・プラントを5月に閉鎖することとなったものである。

 

もっとも、このプラントの操業により、同社は、そのキャッシュ・フローのほとんどを稼ぎ出していたものであるから、同プラントを閉鎖すること自体、会社の存続が危ぶまれる事態となるものとなり、これらのこともあり、同社の1株当たりの株価も1ドルを割り続けるような惨状になってきていたわけである。

 

(株式併合の結果)

こういった中で、同社は、株式の併合を行い、ある意味員数合わせの株価による上場廃止回避を図ったわけであるが、その行為は格好の投資家による信用売の対象となっていたところに、仕手筋が介入し、踏み上げ相場を仕掛け(第1回目の上昇)、特に722日の日本の参議院議員選挙の結果による電力会社用のウラン燃料の需要の復活という材料とも相まって会社の業績に何らの変化が無いにも係らず、一層の株価の上昇が起き(第2回目の上昇)、さらに踏み上げ相場が継続されていたわけであるが、同社に対しては、729日には、米国エネルギー省がエネルギー戦略上約200億ドルの融資保証を実行することが発表され、これが、より題材視され、さらなる株価の上昇が起きた(第3回目の上昇)わけなのである。

 

(まだまだ資金不足)

もっとも、その後の同社の株式が低落傾向にある理由は、この資金的保証は年末までに全体で400億ドルは必要と見られているものであり、まだ残りの200億ドルの保証の見込みが確定していないのである。同社筋等からは、後の追加融資保証先として、100億ドル分を米国エネルギー省に、残りの100億ドル分を日本の輸出基金筋から保証融資を実行してもらおうとの見込みが出てもいるが、驚くことは、ここに日本の名前を見出すことであり、我々の知らない間に、如何に世界の原子力ムラ(Nuclear Establishment)が日本企業や政府筋を取り込んでいたか、また逆に日本企業や政府筋が取り込まれていたかを明らかにするものとして、この情報は、是非留意してもらいたい事実と思料する。

 

(仕手戦として見ると)

ちなみに、余談ではあるが、今回のこのUSEC社の仕手戦について、解説するならば、踏み上げ相場を仕掛けた仕掛け人は、少なくとも、3者あったと推測される。

 

通常、米国の場合こういったケースで、仕掛ける方も多くがヘッジファンドであり、借入金で株式の買い上げを行うため、早期の利潤の確保、相場よりの撤退を心がける。この場合、第1回目の上昇での売り抜け、第2回目の上昇での売り抜け、第3回目の上昇での売り抜けは、すべて別の者(多くは別々のヘッジファンド)であったと思われる。

 

今回のような大相場になるには、この売り抜けとさらに上値での売り抜けを狙う新たな介入者への状況の受け渡しが上手くなされることが肝要であり、その点から見ると今回のUSEC社の相場は、適宜の題材を絡ませ(その題材の一つに日本の参議院議員選挙の結果があてられたという事実がある)、模範的な受け渡しにより、一層の大相場に繋がったものと言えよう。

 

(仕手株に証券市場の正当性が無い理由)

もっとも、前述した通り、そもそも証券市場と言うものが何のためにあるのかという欧米的な視点に立った場合、会社の経営指標とは、かけ離れた評価(異常に高い株価)を現出する仕手株というものに対して、マーケットが際物的位置付けをすることは、言わずもがなのことであり、証券市場で、会社の資金調達を行うという本来の目的とはかけ離れたという意味で、こういった株式が生まれる余地がある業界というものに関しては、マーケットにおいては、業界自体が異端であり、正当性が無いものとしての評価が徐々に定着していくことになるといえる。

 

(注目されるべき点)

そういった意味で、今後も第23のUSEC社のような仕手戦に株価が翻弄される銘柄が生まれるようであれば、それはすなわちウラン関連業界の苦境を裏付ける何よりの証拠となるとともに、ウラン関連業界に対する国際的な評価の低迷のバロメーターとも成り得るものといえると考える。

 

福島第1原発事故が、世界のウラン関連業界における日本流に言うところの仕手株の顕在化という事態にまで、発展して来たことは、今回の仕手戦で誰が利潤を得たのか等と言う興味本位の話題を超越して、ウラン関連業界に対する将来性、正当性と言うべき事態について、世界のマーケットが冷徹に評価しだしたことを示すものと言え、見逃すべきではないマーケット・メッセージだと思料している。

(平成2584日事務局記)