原子力ムラの黄昏(米国ウラン精製会社が破産の申請により株価急落)

(驚愕したニュース)

米国から先般,原子力ムラ(Nuclear Establishment)に所属する人々にとって見ると、まさに驚愕するとしか言いようのないニュースが飛び込んで来た。

 

ウラン精製の米国における国策会社と言えたあの「USEC社」が3月5日破産の申請を行ったのである。

 

 ちなみに「あの」と言う言葉を当会が用いる理由は、この会社、昨年8月4日付の本トピックス欄で当会が取り上げた株式がニューヨーク証券市場(NYSE)で仕手株化し、乱高下するにおよび市場の一躍注目を集めるに至った「あの」USEC社だからである。

http://sokutei-machida.jimdo.com/ニュース/参議院議員選とウラン銘柄/

 

以下、その内容を伝える3月5日付のウォール街からの米国ネットニュース(24/7 Wall St. )の大意を翻訳し、掲載してみたい。

 

 

         ウラン精製会社が破産を申請し株価が急落 

(Uranium Enrichment Company Files for Bankruptcy, Stock Collapses)

 

 

http://finance.yahoo.com/news/uranium-enrichment-company-files-bankruptcy-140027009.html

 

USEC社は長年に亘り、米国のウラン精製プロジェクトに係り、経営が低迷していた。昨年12月同社は、債権者と返済に関し同意に至ったが、3月5日、会社の再構築を目指す11章破産の申請を行ったものである。

 

 

USEC社は、長年米国で唯一の低品位ウランの精製を行う会社であり、同社は過去数年間に亘り、ソ連時代の核兵器からのウランを原子力発電用の燃料に作製し直す作業を担ってきていた。

 

3月5日の11章破産申請の発表に際して、この作業については今後も継続していくとのコメントが会社側からは発表されている。

 

またUSEC社が行っていた米国遠心分離ウラン精製プロジェクトなどの他のプロジェクトも継続されるとのことである。

 

このプロジェクトでは、デモンストレーション用の遠心分離システムの構築に際して米国エネルギー省から2億8000万ドルの資金援助が行われていた。同社は独自に20億ドルの借款を新たなウラン精製施設構築のために連邦政府から受けれるように交渉中であった。

 

しかしながら福島第1原発の事故がその可能性を消し去ってしまったと言える。

 

USEC社の一連の米国遠心分離ウラン精製プロジェクトは、もともとその建設のための永久借款成立の遅れと2011年に起きた福島第1原発事故による世界的なウランの供給過剰により、作業が遅延していたのである。

 

福島第1原発の事故により、日本とドイツの50以上の原子力発電所の原子炉が閉鎖され、その結果ウラン燃料は供給過剰となり、ここ10年来最低の価額をウラン燃料はつけるところとなった。

 

このことは、米国遠心分離ウラン精製プロジェクトの技術面での近年の進捗に否定的に働いたのである。 USEC社は、この破産法の申請により、本年3月の終わりまでに、少なくとも6000万ドルのキャッシュを得られる新たな再建策を立てることを始めることができるようになる。

 

同社によれば、この計画で本年12月末日までには、3億1400万ドルの内部留保が獲得でき、第一四半期の重要な支払いを行った後も、なお、6000万ドルの現金が会社に残るとのことである。 同社の株価は、過去1年間1株当たり2.60ドルから29.12ドルの間を乱高下してきたが、発表を受け、36%急落し、1株当たり3.56ドルになった。

 

 

<当会からのコメント>

(ロイター電、時事電でも報道)

前述したとおり、昨年8月4日付で当会は、この会社を当欄で取り上げ、会社自体だけではなく、この会社の苦境は、世界の原子力産業自体の将来的苦境を何より意味することをお伝えしていた。

 

ちなみに同社のプロフィール等は、この8月4日付当欄トピックスを参照いただきたい次第であるが、今回の同社の破産の申請については、日本の主要マスコミでは、相変わらず全く取り上げられてはいない。しかしながら、邦訳版のロイター電や時事電では、当該内容については報道配信がきちんとされているという事実がある。

 

http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTJEA2402320140305      

http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2014030600232

 

当会としてこれらの日本語による報道内容に関して、まずコメントするならば、配信の記事内容についてミスリーディングに当たるような箇所は無いと評価できると思う。

 

(重視していない点)

しかしながら、これらの記事が重要視していない問題として、当会がこれも何度も当欄にてお伝えしている「メガトンからメガワットへプログラム」(「メガトンからメガワットへプログラム」については、一昨年8月17日付の本トピックス欄を参照いただきたい(http://sokutei-machida.jimdo.com/ニュース/米国投資情報から見るウラン/))の昨年末での終了との関連性がほとんど言及されていない点については、その影響につき留意をしておいてもらう必要があると思われる(※注)。

 

福島第1原発事故以前の世界のウラン需要においては、ウラン鉱山より掘り出されるウラン鉱石だけでは、ウラン需要を賄いきれておらず、この米露協調によるロシアの解体核からのウラン燃料の世界的再利用というものが、極めて供給サイドにおいて重要な意味を持っていた。

 

(終了したプロジェクトと破産申請が意味するもの)

しかしながら、この解体核によるウラン燃料の供給と言うプロジェクトは、ロシア側が延長を申し出なかったため、昨年末に終了しており、この終了と言う事実が発生することから、世界のウラン需要は、本年は供給が細り、ウラン鉱石の価額も回復するのではないかと言う期待が、昨年末より世界の原子力関係者の間では語られていたのであった。

 

さらに近時は、日本の安倍政権によるエネルギー行政に対する原子力発電所の再稼働の姿勢がより具体化してきたこともあり、カメコ社に代表されるウラン鉱山関連の会社の株式も上昇基調にあったものであり、この環境に冷や水を浴びせたというのが今回のUSEC社の破産の申請と言える。

 

同社の破産の申請は、客観的に見れば、ロイター電等が伝えるように福島第1原発事故によるウラン燃料の需要減と言うことができるのであるが、当会としては、より直接的原因は、前述の「メガトンからメガワットへプログラム」終了に伴う米国の国策としての解体核処理会社の存在意義の消滅によるところが大きいと考えている。そして国策としての解体核の利用がなくなる以上、米国政府としても、USEC社に対して、遅々として進まない新たなウラン精製システムへの追加投資には及び腰にならざるを得ず、その結果が3月5日の破産の申請であったと見るべきであろう。言い換えれば米国政府が既存のウラン精製ビジネスについて、多額な投資をしてまで、新たな技術構築をする必要は無いビジネスと現状判断したと言うことに帰結する結果がこのUSEC社の破産申請と思料されるものである。

だとすれば、原子力産業の斜陽産業化を米国政府自体が暗に認めたと捉えるべきニュースとして、この破産の申請は理解されるべきものと思われる。

  

(日本の実情)

さて、現状の日本の実情であるが、東京都知事選挙で脱原発派は敗れたとはいえ、有権者による200万票近い支持が脱原発政策に関しては行われたといえるものであり、何より、小泉元首相の脱原発の表明により、自民党内においても、昨年来以上に脱原発派が本年は台頭し、国家としての正論を述べだすに至っているものである。世界の原子力ムラが期待する日本における原子力政策の積極的復活は、それを声高に言う者はいたとしても、具体的政策として推進し実行化ができるとは到底思われないと言うのが現状であろう。

 

(今後の留意点)

今後当会として、世界のウラン需要に関して、より重要となる事実は、前述の「メガトンからメガワットへプログラム」終了が意味する政治的側面であろうと思う。このプロジェクトの終了は、歴史的に見れば、米露間の協調路線の終焉という意味合いを持っていると当会としては意識しており、その現実的発露が今回のウクライナ問題に早速現れているのではないかと考えている。

 

ロシアが解体核利用プロジェクトを終了させたと言うことは、ある意味これ以上の核兵器の解体が不必要になってきた、すなわち核兵器の軍事的意味合いが今後増強されると判断したからと見るべきではなかろうか。

 

だとすれば、ウラン鉱石に対する需要増は、原子力発電所の稼働による需要増というセクターだけではなく、再度軍事利用による需要増という観点も含め、留意を行っていかなければならないものとなってきているのではないかと当会としては思料する次第であり、今後は日本においても原子力発電所の軍事的技術蓄積という側面が強調される動きが、原発推進派の論拠の一つになることを予測し、それへの対応も考慮していく必要性が脱原発派には求められてくる可能性を当会としては指摘しておきたいと思う。

 

※注:このプロジェクトの運営は、米国だけではなく日本も含めた2002年当時のG8諸国が10年  

   間に亘り、200億ドルを資金として提供することにより、成り立ってきたものであった。

 

(平成26年3月9日 事務局記)