<低線量被曝に関するパラダイム転換>

4月28日付の中部大学の武田邦彦教授のブログ「被爆と健康決定版広島長崎の被爆論文が出ました。」に紹介されている「Radiation Research」に掲載された日本の放射線影響研究所の「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第 14 報、1950-2003、がんおよび非がん疾患の概要」(原文サイトはこちら)は、現在の日本政府、IAEAの低線量被曝に関する見解を変更させることにつながる可能性のある重要な論文になると思料されます。

 

従来より、主要な諸国においては、「多量に被曝した場合、がんになる確率と被曝線量との間に比例関係があることが解明されています。」(「スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか」42ページ)とされておりましたが、100ミリシーベルト以下の低線量の被曝に関しては、「低線量の被曝の場合の人体影響については、未解明の部分がたくさんあり」(ますが)「非常の少量の被曝の場合でも、その人体影響は被曝量に比例すると仮定されています。」(「同書42ページ」)との立場を主要な諸国すなわち日本政府及びIAEAはとっていたものです。(スウェーデン政府も同様の立場を当然とります。)

 

すなわち、低線量被曝については、人体影響があるとの確定的立場に立つものではないが、安全サイドの考え方により、仮定的にあると考えて、規制値としていわゆる1ミリシーベルト規制(この問題については平成24年2月15日付のトピックス(我国における放射線量の法的規制に関する考察(規制値1ミリシーベルトの根拠は何か)について)をご参照ください)を設け、対応をするとの立場に日本政府はありました。

 

このため、日本政府が行っている行為はあくまで仮定ですから、確定的なものではないため、福島第一原発事故後に、規制値をいきなり20ミリシーベルトに引き上げれるような対応も取れたわけでした。

 

これに対して今回の論文は武田邦彦教授も述べるように

 

①「これ以下なら安全という」「閾値」がないことを明確に示していること

②低線量被曝でも「被曝量と病気の発生」には比例関係が認められること(直線近似が成立すること)

③福島の小学生が被曝した、20ミリシーベルトで子供がガンになる可能性は100人に2人程度と高率になること

 

という重大な問題を明確にしたものといえ、現在行われている郡山における学校の集団疎開訴訟に対しても、影響を与えるものと思われますし、何より食品の食物被曝に対する製造会社側の身勝手な言い分すなわち政府基準内であるならば当該食品は安全であると強弁する対応も根拠を失うこととなりましょう。

 

この見解が出たことに関する原子力推進派の見解ですが、直接的にこの問題にリファーするものは、現在のところ見当たりません。

 

しかしながら、自然放射線との明確な区別ができないことによる因果関係不明論をもって、低線量被曝に対する対抗意見を主張してくるのではないかということが容易に思料されます。

 

事実5月20日に東京工業大学で行われた鈴木正昭教授の講演会においては、鈴木教授は直接にこの問題にリファーすることはありませんでしたが、100ミリシーベルト以下のがん発生患者数を10万人につき3000人から4000人程度と紹介し、これは、自然界におけるがん発生患者数とほぼ同値であるとし、放射線との因果関係の立証に関する困難さを指摘する講演が行われていることは、重要であると思われます。

 

(平成24年5月24日 事務局記)