<ウラン(鉱山)株式に対するアナリストの買い推奨を信じるべきか?>

 現状の世界のコモディティー市場は、米国のQE3の発表によって、価額上昇の傾向にあるのですが、その中において、ウラン(鉱山)市場の状況は、かんばしくありません。

 

 当会においては、原子力発電所問題を、その稼動のための根本的要素であるウラン(鉱山)の市況やマーケット目線から見ることで、グローバルな状況の中での原子力発電所のバイアスのかからない、位置付けを明らかにし、あわせて、その将来性に関する見込みを閲覧者の皆様にお伝えすべく、米国の投資情報等から、和訳を行い、当会からのコメント等を加えて解説をしてまいりました。

 

 今般(平成24年10月1日)ウラン(鉱山)市場の動向に関し、欧米らしい市場原理主義に基づく評論的な投資情報が、さらに出現してまいりましたので、皆様に是非ご紹介したいと考え、大意を和訳するとともにコメントを含め、以下掲載いたします。

 

なお、原文は以下のものです。 

http://seekingalpha.com/article/897981-should-you-follow-analyst-recommendations-for-uranium-stocks?source=yahoo

 

(大意)

<ウラン(鉱山)株式に対するアナリストの買い推奨を信じるべきか?>


 先週、モルガンスタンレーの調査チームは、ウラン価額の見込みについて、彼らの見方を上方修正した。

 

 多くの株式の購入を勧める側の公表されているリサーチによれば、仮に、ウラン価額の上方改善がなく、新たな供給のための鉱山プロジェクトが開始されないとしても、モルガンスタンレーのこの見方に対して、増加する需要と均衡化する供給から、同様の見方をしている。

 

 モルガンスタンレーのみが、このような見方をしているわけではないのである。多くの他のアナリスト、製造者そして原子力産業の熱烈な信奉者は、現在同じことを感じているといえる。


 もっともウラン価額は、未だ下落傾向にあるし、ウラン関係の証券は、頑なにアンダーパフォームに位置付けられている。

 

 われわれとしては、こういったウラン価額の下落の時期に原子力発電の燃料消費に関する見方を踏まえた考えを採用し、レポートを簡潔に発行したモルガンスタンレーの行動を賞賛はしたいが、われわれとしても、極めて少数の例外を除き、原子力産業担当のアナリストが、福島第1原発の事故の後、一貫して、投資の推奨の予測をはずしていることを指摘しておきたい。


 モルガンスタンレーのレポートの論理の下地にある内容に関して、同意しないわけではない。

 

 しかしながら、我々は、そのタイミングに疑問を呈する。実際、次期10年から15年後において、現在のウラン価格では、需要が供給を上回る予測がある。しかし、この前提は、数年の間に日本の原子力発電所の少なくとも半分が再稼動し、中国が原子力発電所の建設を再開し、その他の重要な新興国において、段階的な原子力発電所の廃炉計画が採用されず、ウラン市場に再利用ウランが流入しないことが前提である。

 

 我々もほかの者のように現在の不安定なウラン市場が再度上昇するであろうということは信じている。

 

 しかしながら、これは中期的な期間を見た中での、見込みなのである。

 

 この時期に「買い」推奨のレポートを出すことは、ウラン関係の証券の取り扱いに対する基本的理解が欠けているのか、不誠実かのどちらかだ。

 

 われわれは、良い推奨と平凡なアナリストの推奨以下のものとの相違が、結局投資時期の相違に帰結することを思い出すべきである。

 

 モルガンスタンレーがこの時期に推奨レポートを出すことが当たっていたかどうかは、時間が決めてくれるだろう。

 

 一方、われわれは、アナリストたちに対して、あなた方の見方を回復が遅れる見込みのウラン市場とウラン産業の現在の苦境を反映したものに勇気をもって直すように希望したい。

 

 現在のウラン市場の極めて高い目標価格は、誰にとっても良いことではない。

 

 そのような予想は、投資社会をミスリードするものであるし、アナリストの名声にダメージを与える。そしてこのような予測は、現在のウラン(鉱山)業のファンダメンタルを反映してはいないのである。

 

「Seeking Alpha」October 1,2012

(コメント)


(頻繁になった無料投資情報)

 

 米国におけるウラン(鉱山)関係の株式・証券に関する無料投資情報は、福島第1原発事故以前は、月に1回配信されれば良いという程度の閑散とした状況にあるものでした。

 

 しかしながら、当該事故以降は、この様相が様変わりし、頻繁に無料投資情報が配信されるようになりました。

 

 この投資情報の多くは、値下がりをするウラン(鉱山)株式やウラン(鉱石)市況等に対して、近いうちの値上がりを推定し、購入を推奨するものであり、これに対して近時は、この主張に対して、対抗する主張が、見られだしたというのが、現在の米国のウラン(鉱山)関係の無料投資情報の世界といえます。

 

 すなわち、平成24年1013日付で、ご紹介した「日本 さよなら 原子力発電所」がその対抗する主張の先端を行く、記事ではないのかと、当会としては、考えているのですが、やはり世界のウラン需要の10%を占める日本の「脱原発宣言」は、市況に与える影響は、大きかったといえ、依然としてウラン関係の株式・証券等については、一貫して値下がりの傾向が変わっていません。

 

(今回の紹介記事)


 さて、こういった背景の中で、今回ご紹介する記事は、ウラン(鉱山)関係の株式・証券を買い推奨を行っている大手金融グループ(モルガン スタンレイ)に対して、明確に異論を唱えるだけではなく、批判をも加えたものであり、現在のわが国における相変わらずの原子力ムラ(Nuclear Establishment)に対する過度の遠慮や擁護が横行する世界ではあり得ないものといえ、同じ資本主義信奉国でありながら、この彼我の差がどこから来るのか大変興味深いものがあると当会としては、考えるものです。

 

(ギリシャ人の哲学思想)


 欧米人の哲学思想の原点をなすギリシャ人の哲学思想において、「真に正しいものは何であるか」ということは、大変重要な哲学上の命題でありました。


 この命題に関して、欧米において一般的に言われていることは、「マーケット(市場)で生き残ったものこそが、神に選ばれたものであり、真に正しいものである。」という思想があります。

 すなわち、マーケット(市場)という中で取捨選択され、選ばれ、生き残るものこそが、真の価値を持つものであるという思想といえます。


 よって欧米人は、その真に正しいものを決める場であるマーケット(市場)が、恣意的に歪められることを極端に嫌悪します(恣意的に歪められれば、生き残ったものが真に正しいものではなくなる可能性が出てくるからです)。


 米国における株式市場のインサイダー取引違反においては、懲役何百年などという人間の生存年数をはるかに超えた懲役が課されることがあるのも、こういった宗教的概念に違反し、マーケット(市場)を混乱させた懲罰だと捉えれば、納得がいくものといえましょう。

 

(神聖視されるマーケット(市場))


 このようにマーケット(市場)というものについて、欧米人は一種絶対的神聖視を行いますので、本掲載記事にあるようなマーケットのファンダメンタルを無視した推奨は、マーケット(市場)を歪めるものであり、 宗教的嫌悪の対象と多くの人々からは、なるものなのです。

 

 欧米の資本主義が、崩れそうで崩れない由縁というものは、こういった資本主義を支えるマーケット(市場)に宗教的な倫理性がビルト・インされていることが、大きな理由だと当会としては、考えています。


 こういった事情を前提として、本掲載記事をご覧いただくと、マーケットを自らの利益を擁護するために歪めようとしているとしか思えないモルガンスタンレー等の主張(買い推奨)に対して、本掲載記事の著者が、「この時期に「買い」推奨のレポートを出すことは、ウラン関係の証券の取り扱いに対する基本的理解が欠けているのか、不誠実かのどちらかだ。」とまで言い切り、堂々と批判を行うことは、圧巻であり、マーケット(市場)を守ろうとする宗教的信念の存在すら垣間見えるように思われるのです。

 

(彼我の差と日本の危機)


 こういった本掲載記事のような無料投資情報が、日々、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を中心に個人投資家に配信される社会は、少なくともメディア・ブラックアウト(メディアの大停電)と揶揄される我々の社会よりは、よほどまともな社会であると思料せざるを得ないところに、今の日本の危機があるといえるのではないでしょうか。

 

(平成241030日事務局記)